WORK 142

みらいえ こどもと家族のクリニック

変わっていく世の中の流れに順応し、次世代にも繋げられる新しいスタイルを築いた病院です。 旦那様は小児科医、奥様は呼吸器科医というご夫婦は、幾つかの選択肢を検討し、沼津の中心地にてファミリークリニックを開業されることを決断。 感染者用の独立した動線、来院の用途に合わせた空間づくり、付き添いの方に対する気遣いなど、専門病院での経験や海外研修で得た知識を活かしつつ、今の世の中で求められている要素を1つずつ建築に落とし込んでいきました。 ダブルドクターの強みを活かし、効率化を進めた院内レイアウトにもご注目ください。

建築データ

  • 構造

    SE構法
  • 所在地

    静岡県沼津市
  • 築年数

    新築
  • 階数

    2階建て
  • 延床面積

    298.88㎡(90.42坪)
  • 世帯数

  • 性能

みらいえ こどもと家族のクリニック 外観

外観 Facade

建物は交通量の多い北側に寄せて配置した。ロゴを取り付けた北面は建物の裏側に当たるが、ある意味クリニックにとっては「顔」にもなる。 クリニック名の「みらいえ」は「みらい」と「家」を組み合わせたもの。 このクリニックは地域のもの、皆のものという感覚が強く、自然と「みらい」という言葉が思い浮かんだそう。

幕板を風避けとした外観

外観 Facade

また、「みらいえ」に加え、こどもだけでなく親御さんや御祖父母も一緒に来院するかかりつけ医になりたい、こどもが成長して大人になっても通えるクリニックにしたいという想いから、「こどもと家族のクリニック」を加えることになった。

3つの動線を分けたクリニック

外観 Facade

エントランスを設けた建物南面は、軒を深く取り、軒下の一部に板を貼ることで風除室の代わりとした。 雨が吹き込まないため、患者さんは余裕を持って身支度することができる。

1.8mの奥行きがある軒下

エントランス Entrance

軒下の奥行きは 1.8m ほど。 一番奥から、「小児科(感染者用)出入口」「小児科出入口」「内科出入口」と、来院目的に合わせて動線を分けた。 出入り口や通路は、車椅子やベビーカーでも通れるように余裕のあるサイズで計画。

外受付

受付 Reception

外受付はドクターの発案で設置された。 インフルエンザや麻疹、水ぼうそうなど、感染症の患者さんは建物の外から受付を済ませ、そのまま専用の出入口を通って感染症対策室に向かう。 症状に合わせた動線の分離と受付の一元化を同時に実現するアイディア。

勾配天井が広々とした待合

待合 Waiting

明るい木目をベースに、色彩豊かな家具で小児科らしさを感じさせる待合室。 内装は淡い色彩でベーシックにまとまっているため、家具のテイストを変えることでがらりとイメージを変えることができる。 勾配天井を活かした大空間にドクターが選ばれたビタミンカラーの家具が調和し、明るく、開放感のある空間となった。

待合

待合 Waiting

小児科はエントランスで靴を脱ぐスタイルの医院も多いが、こちらのクリニックは基本土足で移動するように設計されている。 時代によって患者さんやご家族の考えは変わるもの。クリニックの在り方もそれに合わせてアップデートした方が良いというのがドクターの考え。

受付

受付 Reception

内科の待合室から受付越しに小児科の待合室を見る。クリニックの受付は小児科と内科の間に配置し、小児科と内科、両方の患者さんに対応できるレイアウトとした。 受付を一か所に纏めることで情報の管理が一元化され、スタッフの配置も最適化できる。また、感染症患者用の外受付もここに繋がっている。

内科の待合

待合 Waiting

受付の一元化に合わせ、待合室を一つに纏めるプランも検討されたが、患者さんの年代が異なることから、最終的にはお互いが落ち着いて過ごせるように別々に設けることになった。 内科の待合室は大人が対象ということで、折り上げ天井と間接照明で上品な雰囲気にまとめている。

健診・予防接種ルーム

処置室 Treatment room

設計の出発点となった、健康診断・予防接種専用スペース。 病院に来る患者さんは具合の悪い人だけではない。 定期健診に来る人、予防接種に来る人、定期的な診察が必要な人など、様々な状態の患者さんがいて、すぐに帰れる人もいれば、長時間滞在する人もいる。 こちらのクリニックは、患者さんの用途や状態に合わせて複数の空間を設計している。

ダークトーンでまとめた予防接種ルーム

処置室 Treatment room

予防接種後は暫くその場に留まる必要があるため、こどもと付き添いの方が落ち着いて過ごせるようにしたいとドクターからご要望があった。 健康診断・予防接種ルームはダークトーンの床材を使用し、他の処置室よりも照明の明るさを落としている。

予防接種ルームに設置した、折り畳みタイプのベッド

処置室 Treatment room

ベッドは折り畳み型にして、未使用時には空間を広く使えるように計画している。 乳幼児の健康診断や予防接種は、付き添いの方に抱っこされた状態で行うのが一般的。 ブースに設置された椅子は大人向けのサイズで、付き添いの方がゆったりと、背中を預けて座れるよう配慮されている。

感染者専用出入り口

処置室 Treatment room

感染者用出入口の先には、感染対策室と点滴室を設けた。通常の診察とは動線を分け、専用の対策室を設けたことで感染症の患者さんも安心して利用できるようになった。

点滴用のフックを設けた処置室

処置室 Treatment room

点滴室は壁面にフックを設置した。 こちらのブースにも大人用の椅子を配置し、こどもがベッドに寝た状態でも、抱っこされた状態でも点滴を受けられるようにしている。

付き添いの方の身体をしっかり受け止める椅子

インテリア Interior

ドクターが選ばれた椅子は、大人の背中をゆったりと包んでくれる。 「親御さんは徹夜で看病していたり、夜間に何度も起こされたり、深夜にこどもが吐いたものを片付けたりしていて、心に余裕がない状態で来院する。そんな親御さんに寄りそうのは小児科医にとって基本的なこと。僕たちが親御さんを気遣うことで、親御さんは子どもに集中できると思っている」とのこと。

内科と小児科がバックヤードで繋がる配置

診療室 Clinic

小児科の診察室と受付、内科の診察室はバックヤードで繋がっている。動線を直線にすることで人の移動がスムーズになる配置計画。

小児科用のトイレ

トイレ Water closet

小児科用のトイレはベビーチェアだけでなく、折り畳み式のおむつ交換台、こども用の踏み台も完備。

ベビーチェアを設置したクリニックのトイレ

トイレ Water closet

折り畳み式の手摺りを設けた内科用トイレ。ご家族で来院されることを考慮し、内科のトイレにもベビーチェアを設置している。

  • 設計

    奥村 賢史

  • 大工

    久保田 雅典