WORK 110
日本の林業と木造建築の関わり方を見直し、次世代に提案する住まい。 需要がないため細く製材されてしまう大径木を、スケール感を維持したまま建材に用いることで、歩留まり率を飛躍的に向上させました。 木材を大きなサイズのまま使用すれば、将来的にこの住まいが解体された時、建材を次の建築物へと転用しやすくなるというメリットもあります。 一方で床には端材に近い挽板を使用するなど、住まい全体で木という素材を無駄なく、隅々まで使い切るという理念を体現しています。
豊かな自然に囲まれた大屋根の住まい。屋根はガルバリウム鋼板。
大きく育った木を標準的な住宅に合わせて製材すると、大部分を廃棄しなければならない。廃棄が増えれば林業家にとって減収になる。大きな材を大きいまま使えばどちらも解決する。
スギの角尺を角柱になるように組み合わせた。一般的なRC造の3倍ほどの耐震性能がある。
大開口で結ばれ、土間と居住空間は行き来自由。屋外と土間、土間と屋内の境界が曖昧になる。
主寝室。丸太を目いっぱい木取りした壁材は、解体後に改めて製材される可能性を考慮している。一方で天井(2階の床)は、細い挽板を積層したもの。木材を無駄なく使いきる。
キッチンの奥に配置したリビングからダイニングを見る。1階の床はモルタル+温風式床暖房を採用。
住まいの構造を支えるコンクリート壁が、居住空間と土間空間を分ける。H鋼材を利用し、L字型に折れ曲がる照明を設置した。
製材の形のままデザインされた造作キッチンはヒノキを使用。材の厚みを活かしてシンクとコンロを埋め込んだ。
土間と直結する大開口により開放的なダイニングスペース。
吹き抜け上部の破風窓から明るい陽射しが降り注ぐ。
造作階段は収納を兼ねる。
スギの太鼓材を現しにした垂木。建材として可能な限り歩留まり率を高めており、万が一この住まいが解体されることになれば、もう一度製材して次の建物に使うことができる。
スギの板目が美しい階段。
南北に配置した2つの空間を繋ぐように、鉄骨に杉製材を渡した。日当たりの良い南面には書斎を配置。
北面には寝室を配置した。21cm×21cmのスギ製材は、住まいを解体した後に表面を削れば柱として使用することができる。
大屋根の形状を活かした2階は、多様な使い方を想定した空間。壁を設け、将来的には2部屋に分けることも可能。
2階から土間を眺める。居住スペースと土間側の間には全面ガラスの引き違い窓を採用した。
網野禎昭(法政大学デザイン工学部 教授) 和知祐樹
木工事:土屋 和之、唐澤 洋 RC:関口 貴裕、渡邉 徹
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