住宅といえば無条件で2階建て建築を思い浮かべる方も多いと思いますが、最近は土地の特性にあわせて、平屋造りや3階建て住宅を選択される方も増えています。今回は平屋にスポットを当て、そのメリット・デメリットを比較しつつ、スムーズな家づくりを進めるためにチェックするべきポイントをお伝えします。
編集 平成建設
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平屋とは何か?
かつて日本建築の主流だった「平屋」
平屋とはずばり、一階建ての住宅のこと。伝統的に日本の住宅は平屋が主流でしたが、都市部の人口密度上昇にともない、現在は二階建て住宅がスタンダードになっています。
平屋には階段がなく、ワンフロアで生活が完結できる点が強み。以前と比べ建築数こそ減りましたが、バリアフリー性能や生活動線の短さを重視する高齢者を中心に、今でも人気の高い建築様式です。
若い世代の間でも平屋が人気に!
しかし最近、20代、30代という若い世代間でも平屋の人気が広がっています。
終の棲家として、老年期を見越したバリアフリー住宅を建築したいという方から、シンプルな動線や禅を感じるデザイン性が好きだという方まで、平屋に憧れる理由は様々です。中には平屋を建築するために郊外で土地を探し、移住する方も!
長い間、日本建築の主流だった平屋住宅には様々なメリットがあります。同時に、二階建てに比べて機能性に劣る部分もあります。以下に平屋造りのメリット・デメリットをまとめましたので、平屋建築を検討される方はぜひ参考になさってください。
平屋のメリットとは?
長年日本建築のスタンダードだった平屋住宅には、様々な強みがあります。ここでは一般的に平屋住宅のメリットと呼ばれる点を、1.間取り面、2.構造面、3.コスト面、4.敷地面に分けて確認します。
間取り面のメリット
- 階段がないためバリアフリー性が高い
- 階段分の床面積を有効に活用できる
- 生活動線がシンプルになり、家事効率の良い間取りを作りやすい
- ワンフロアで生活が完結するため、家族と顔を合わせる機会が増え、互いの気配を感じながら暮らすことができる
平屋住宅の優れた点は、何と言っても階段が不要である点。そのぶん居住空間が広がりますし、部屋を移動するために毎日階段を上り下りしなくても良いのが最大のメリットでしょう。家族がワンフロアで生活するため互いの気配を感じやすく、コミュニケーションが増える点も◎。階段がないことで大型の家具を運び込みやすいというメリットもあります。
構造面のメリット
- 一般的に、二階建てに比べて耐震性能に優れると言われる
- 小屋裏を利用した天井の高い空間を作れる
近年は耐震性の高い木造建築構法も生み出されていますが、従来の在来木軸構法では、平屋は2階建てに比べて地震に強いとされています。また、天井の高い空間を作れるのも、二階がない平屋ならではの強み。天井を高く取る設計はモダンスタイルとの相性も良く、開放感がぐっと増します。
コスト面のメリット
- トイレや洗面所を一か所にすれば、機器の設置代やメンテナンス費用を抑えやすい
- 外壁の塗り替えや屋根の修繕などの外装メンテナンス時に足場の費用を抑えやすい
一般的に平屋は二階建てに比べて建築・メンテナンスのコストがかかりますが、人生という長いスパンにおいて、将来的に二階建てを平屋に減築する可能性があるならば、最初から平屋の住まいを建てることも一つの選択です。
敷地の使い方(トータルプランニング)のメリット
- 中庭やプライベートガーデンなど、庭を取り入れたプランが作りやすい
ワンフロアで完結する平屋では、どの部屋からも庭にアクセスすることができます。広い前庭で家族が繋がったり、中庭を中心に居室を配置したり、屋外とフラットに繋がる平屋ならではのプランニングが人気です。
平屋のデメリットとは?
一方、時代が変わり、現代の価値観では平屋住宅にデメリットを感じることがあります。メリット同様に、1.間取り面、2.構造面、3.コスト面、4.敷地面から、それぞれのデメリットについて確認します。デメリットとして挙げられる点の殆どは設計次第で解決することができますので、まずは住宅会社や設計士にご相談してみてください。
間取り面のデメリット
- 親子の寝室が近くなるなど、家族間のプライバシーが確保しづらい
- 水まわりを一か所にまとめると、寝室からの動線が長くなることがある
- 寝室などのプライベート空間も一階に配置されるため、外部からの視線が気になってしまう
メリットとデメリットは紙一重です。家族の気配を感じられるということは、裏返せば家族間のプライバシー確保がしづらいということですし、屋外とフラットに繋がるということは、外部からの視線が気になるということにもなります。 しかし、現代において重要視されるようになったプライバシーの問題は、概ね自由設計のプランニングで解決できます。
こうすれば解決!
LDKを挟むように親子の寝室を配置してプライベート空間の距離を保つ、各部屋から均等な距離に水まわりを配置する、プライバシーを考慮した塀や植栽計画、通りに面する側には通常の窓ではなくハイサイドライトを設ける…など
構造面のデメリット
- 水害の際に垂直避難ができない
近年、地震だけでなく台風や豪雨などの自然災害が増えています。川が氾濫した際、緊急避難として二階に上がることが推奨されていますが、二階のない平屋は垂直避難をすることができません。
こうすれば解決!
建築する場所について綿密に下調べをする、ハザードマップを確認してから土地を購入する、緊急時には近隣の避難所へ退避する…など
コスト面のデメリット
- 二階建てに比べて建築費・坪単価が割高になる
- 建物評価額が高くなりやすく、固定資産税や都市計画税が高くなりやすい
- 敷地面積や日当たりなど条件の良い土地が必要となるため、土地の取得費用が高くなりやすい
平屋は二階建てに比べて屋根面積と基礎面積が大きくなり、建築費が高くなりがちです。また、土地そのものの広さも必要となりますし、周囲よりも建築物の高さが低いぶん、日当たり条件も重要になります。残念ながら都市部では中々条件に合った土地を確保できないため、平屋を建築するのであれば、土地単価を抑えやすい郊外をターゲットにすることをお薦めします。
こうすれば解決!
郊外で土地を探す、旗竿地など土地単価の安い土地を購入して設計を工夫する…など
敷地の使い方(トータルプランニング)のデメリット
- 二階建てよりも日当たりに配慮した敷地選び、建物配置を工夫しなければならない
- バルコニーが作れないため、外構計画を工夫しないと洗濯物が見えてしまう
一階層で完結する平屋は周囲よりも建築物の高さが低くなるため、日当たりが非常に重要になります。日の入り方を考慮して建物を配置する、人目の多い方向は植栽で目隠しをするなど、快適に暮らすためには、敷地に合わせた間取りや外構計画の工夫が必要となります。
こうすれば解決!
建築会社と一緒に土地を探す、バルコニーの代わりに外部の目が届かない中庭や裏庭を検討する…など
平屋か? 二階建てか? 迷ったら…
平屋住宅のメリット・デメリットを比較しましたが、住まいという大きな買い物は損得だけで決めることはできません。平屋か二階建てか迷った時は、予算のような現実的な条件と、理想とする新生活の両面から「平屋を建てること」をよくご検討ください。
平屋を建てられる土地か確認しましょう
土地には「建ぺい率」や「容積率」が設定されており、その土地に建てられる建物の上限値が予め決められています。購入したい土地を見つけた場合、その土地に平屋を建てたらどれぐらいの広さが確保できるのか、家屋を含めて予算内に収まりそうか、購入前に住宅会社に相談しましょう。
地域によって建ぺい率の設定は異なりますし、例えば、角地であれば建ぺい率が10%増える角地緩和という制度もあります。土地を探す際にはエキスパートである不動産会社や住宅会社と協力することをお薦めします。
また、平屋を建築することを第一条件にするなら、都市部から離れ、日当たりが良く広めの土地を見つけやすい郊外へ移住することも視野に入れて良いでしょう。
必要な間取りが予算内で建築可能か確認しましょう
予め必要な部屋数や確保したいリビングの広さなどを書き出し、実際に建築するとどれぐらいの面積になるか認識しましょう。住宅会社に希望を伝える時、部屋数やLDKの広さが分かっていると概算の見積もりを取りやすいです。試算がオーバーする場合はプランの練り直しが必要です。
逆に予算を伝え、予算内で建築可能な平屋プランを作成してもらうことも可能です。
実際に平屋を見学してイメージを固めましょう
平屋のメリット・デメリットを理解するために一番良いのは、実際に建築された平屋住宅を見学することです。建築を希望する住宅会社に、内覧できる平屋住宅がないか確認してみましょう。実際の平屋を見学・内覧することで生活の具体的なイメージが湧きますし、ひょっとしたら妥協できないデメリットに気づくこともあるかもしれません。
見学できる物件がない場合は、様々な施工事例を見比べて、ご自身が建てたい平屋についてイメージを固めましょう。一口に平屋と言っても、純和風な建築もあれば、モダンなデザイナーズ住宅もあります。インターネット上には多様な事例が掲載されていますし、住宅会社は事例カタログを発行しているので、なるべく多くのプランや事例集を見比べてみましょう。
ライフプランやライフスタイルと照らし合わせてみましょう
新しい家でどのように生活したいのか、ライフスタイルと平屋との相性を考えましょう。家族のコミュニケーションを大事にしたい、庭と繋がったリビングが欲しいなど、平屋の優れている点と合致するでしょうか?
また、平屋の魅力の一つが老年期にも対応できるバリアフリー性ですが、逆に老後は別の地域に引っ越す予定がある、マンション暮らしを想定しているというのであれば、それもひとつの判断材料になります。
◆まとめ◆間取りだけでなく土地探しやトータルコストを加味した検討が重要
若い世代の支持も得て人気が回復しつつある「平屋住宅」ですが、上記のとおり表裏一体のメリット・デメリットがあります。
しかし、一番のネックである「平屋は高い」という固定概念は、老後に二階建てを減築したり間取り変更をしたりする可能性を考慮すれば一概に高いとは言えませんし、平屋のデメリットとされる点は設計の工夫で解決することができます。 平屋に限らずですが、快適な住宅を建築するためには間取りをどうするかだけでなく、建物の配置や庭の活用方法も併せて総合的に検討する必要がありますので、敷地を選ぶ段階から住宅会社と相談しながらプランニングすることをお薦めします。