土間のある家の暮らし|主な用途と建設時に検討すべきポイント

薪ストーブを設置した土間ダイニング 注文住宅

戸建て住宅の間取りが洋風化するにつれ、一時は消えたように思われた「土間」。日本人の自然観や生活習慣と結ばれているせいか、近年再びその姿を見るようになりました。今回は土間に焦点を当て、用途に合わせた土間の活用方法や最近の土間事情、快適な土間空間を作るコツについて、実例を交えてご紹介します。

編集 平成建設

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土間の歴史と種類について

土間はもともと玄関と居室を繋ぐスペースで、土足で移動することができ、家事や作業をする場所でした。

上記は「田の字型」と呼ばれる古民家の間取り図です。日本の伝統文化には「オモテ」と「ウラ」、「カミ」と「シモ」という位置概念があり、現代でも表口や裏口、上座と下座といった言葉にその影響が残っています。一般的に「オモテ」が社交の場であるのに対し、「ウラ」はプライベートスペースのことを指し、「シモ」から「カミ」に近づくにつれて格調が高くなるとされています。

田の字型の間取りの場合、土間は「シモ」側にあたり、お客様をもてなす座敷と寝室である納戸は「カミ」側にあたります。また、真ん中の大黒柱を境目として手前側の二部屋(座敷と居間)は地域に開かれた「オモテ」の間、奥側の二部屋(納戸と台所)は家族が過ごす「ウラ」の間として扱われました。

土間は玄関と勝手口(裏庭)を結びつつ、居間と台所、かまどに接しています。これは土間が水を扱う場所であり、家族が協働作業をする場所だったからでしょう。土間と接する側には板間である「ハシリ」が設けられ、作業スペースや配膳スペースとして活用されました。地方によってはこのハシリの幅を広げ、囲炉裏を設けることもあったようです。

住宅の間取りが洋風になった現代でも、土間はリビングやダイニング、キッチンと親和性が高く、寝室や客間に設けられることはほぼありません。

玄関土間

玄関土間

今でも残っている土間空間です。一時期は靴を脱ぐだけのサイズに縮小しましたが、最近は再び拡張して様々な用途に使われることが増えてきました。主な用途はウォークインシューズクローゼットや玄関収納。室内に持ち込みにくいアウトドア用品の収納場所としても人気です。土間を拡張して玄関とキッチンを繋げれば、収納力抜群のパントリーとしても使えます。

通り土間

通り土間

元々の役割同様、オモテの玄関とウラの勝手口を繋ぐ土間空間です。住まいを縦断するように土足スペースを設けることで、家全体の風通しが良くなる、スムーズに荷物が運べる、庭への出入りが簡単になる、子どもの遊び場になるなどのメリットがあります。また、自転車やバイク置き場にも向いています。

リビング土間

昭和の時代はリビング、掃き出し窓、濡れ縁(中間領域)、庭という繋がり方が一般的でしたが、リビング土間を設けることで居住空間の中に中間領域をつくることができます。雨天時でも空間を有効に活用でき、主に趣味を楽しむ作業場として、時にはサンルームやお子様の遊び場としても使われます

土間ダイニング

土間ダイニング

食事をとるダイニングを土間にすることで、庭との一体感が感じられる、開放感のある空間が生まれます。併せてキッチンも配置すれば、ガーデンパーティやバーベキューを楽しむ際、家事動線が短くなってとても便利。土間ダイニングは薪ストーブと相性が良く、ストーブクッキングを楽しみたい方にもお薦めです。

土間をつくる時に検討すべきこと

土間は板間とは全く異なる空間です。土間のメリット・デメリットを比較し、竣工後に後悔しないように、土間の面積や形状、動線など、実際の使い方を想定して検討しましょう。ポイントを押さえることで土間の利便性は大きく向上します。

土間の汚れ対策を考える

土間は土足で移動したり、自転車やバイクをそのまま収納したりできる反面、どうしても土や砂利で汚れがち。汚れが目立つ場合は土間を水拭きしましょう。淡い色合いの素材を使うと汚れが目立ち、お手入れが大変になります。モルタルの色合いやタイルの目地の色にも注意してください。

結露と寒さ対策

玄関土間やリビング土間など、屋内外の境目にある空間は気温差の影響を受けるため結露が発生しやすくなります。結露が発生すると湿度が増し、カビが繁殖しやすくなりますので注意してください。夏は涼しい土間ですが、冬になると凍えることも…

基礎部分の断熱処理に加え、基礎を打つ前に土間にも断熱材を施工することで、外気から伝わる冷気が蓄冷されにくくなります。また、寒気は下方に溜まるものなので、寒さ対策は床から行うのが効果的です。土間で長い時間を過ごすのでれば、床暖房の導入も検討してみましょう。

リノベーションでおしゃれな土間空間に

最近人気の高い古民家リノベーション。古民家につきものの大きな土間にテーブルや椅子を持ち込むことで、来客時に重宝するおしゃれなサロンが生まれます。

ただし、古い建築物は断熱性能が低い点には注意しましょう。リフォームで土間部分に断熱処理を施したり床暖房を追加したりすると費用が掛かりますので、予算を抑えたい場合は薪ストーブの設置がお薦め。輻射熱で屋内をくまなく暖めてくれるだけでなく、ストーブを中心にお客様と語らうコミュニケーション空間が生まれます。

土間のある家の施工事例9選

平成建設にて施工した、自由設計ならではの工夫を施した施工事例を、写真を交えて9件ご紹介します。土間の活用方法に合わせた最適な建材の選び方、ライフスタイルや動線を考慮した間取りプランなど、理想の家づくりのアイディアにご活用ください。

施工事例1 リビング土間に薪ストーブを設置した住まい

北欧製の薪ストーブを設置した土間ダイニング

北欧製のスマートな薪ストーブを設置した土間ダイニング。開放的な大開口で土間とウッドデッキがフラットに繋がり、庭や自然との距離を近くに感じるお住まいです。

通り土間を利用したパントリー

玄関とダイニングを繋ぐ通り土間は、収納棚を造作して収納力を大幅にアップ。

施工事例2 趣味を楽しむ土間のある家

玄関土間と直結するサーフルーム

玄関土間を拡張し、趣味室を設けたお住まい。サーフボードやスケートボードなど、汚れがちな趣味用品も土間ならば気にせずメンテナンスしたり、保管したりすることができます。

長手と短手のガラス戸で仕切った部屋

玄関に突き出た部分をガラス戸で上手く処理しています。長手のガラス戸は引き戸に、短手は片開き戸にすることで、独立した空間にすることも、一つながりの大空間にすることも可能です。

中庭に設けたシャワースペース

趣味室にはサーフィン帰りを意識した動線を設けました。扉の向こうは庭に繋がっているため、帰宅後は玄関を通らずにシャワーを浴び、趣味室に向かうことが出来ます。

施工事例3 アウトドアを楽しむ土間ダイニング

庭に向かって大開口を設けた土間ダイニング

大きな吹き抜けを持つ土間ダイニングです。庭に向かって大開口を設けており、屋内外で一体感のある空間となりました。土間に設けたキッチンは、家庭菜園で採れた野菜を洗ったり、バーベキューの準備をしたりするのに重宝します。

上部が大きな吹き抜けになった土間ダイニング

大開口に加え、吹き抜けの窓からも明るい光が降り注ぎます。高い天井と大きな窓が相乗効果をもたらし、開放感のある居心地の良い空間に。

施工事例4 玄関土間でおもてなしする家

広々とした土間スペースに応接セットを設置。間接照明を仕込んだ式台は、お客様が多い時にはベンチ代わりに使うことができます。玄関は框ドアと2枚引き込み戸を組み合わせ、三連窓のようなデザインを採用しました。木製フレーム、庭と一体化する全面ガラス戸など、こだわりが随所に詰まっています。

玄関土間は、土足で良いからこそ気軽に集まれる空間。バーベキュー時や水遊びの際にも活躍します。

施工事例5 ロードバイクを楽しむ土間

趣味のロードバイクを楽しむ土間

趣味のロードバイクを楽しまれる土間空間。大切な自転車の置き場所として、またメンテナンスやご自身のトレーニング場所としても活用されています。時にはご友人を招いてレースビデオを研究したり、食事をしたりと、コミュニケーション空間としても大活躍。

土間は吹き抜けで2階リビングと繋がる

土間上部の吹き抜けは2階のLDKと繋がっており、いつでも2階から声を掛けることができます。

施工事例6 薪ストーブを設けた玄関土間

大きな吹き抜けで2階と繋がる玄関土間

広々としたタイル張りの玄関土間に、薪ストーブを設置しました。揺らめく炎を眺めながらゆっくりとお酒を楽しんだり、ストーブを利用した料理を楽しんだりされるそうです。

壁面をライブラリとして活用した階段

上階からの眺め。リビングや寝室は2階に設置し、階段に接する壁は本棚として活用しています。

施工事例7 通り土間を設けたレトロな住まい

古材を装飾に使用した、レトロ和モダンな住まい

通り土間を導入した和洋折衷のモダン住宅です。古材を「あらわし」として活用することで、新築でありながら古民家風の雰囲気を感じることができます。

玄関と裏口を繋ぐ和モダンな通り土間

表口と裏口を繋ぐ通り土間。土間に水路を設けて湧き水を通すことで、夏季は天然のクーラーがわりに使うことができます。床下には渡り廊下が収納されており、必要に応じて居室と居室を繋げることが可能です。

施工事例8 愛犬と遊ぶ土間のある家

庭に設けたコンクリートテラスとリビング土間が連続するお住まい。

土間よりも一段高いダイニングキッチン、逆に一段低いリビング。住まいの中に階層を設けつつ素材を変えることで、各スペースを緩やかに分節しています。リビング土間には薄く塗ることでモルタルの風合いを再現することができる、MPCという左官材で仕上げました。

施工事例9 二世帯住宅を繋ぐ通り土間

二つの原価を繋ぐ通り土間

2つの玄関ポーチを繋ぐ通り土間です。雨天時には洗濯物も干せますし、自転車の収納にも役立ちます。

土間は冷気対策が重要

住まいの外部に取り付けるウッドデッキや濡れ縁と異なり、屋内空間である内土間。土間のある空間で快適に暮らすためには冷気対策が大切です。

平成建設の注文住宅はお施主様の希望をデザインに活かしつつ、しっかりと基礎や土間の断熱処理を行うことで住まいの機能面にも配慮しています。コンクリートやモルタルの床暖房も施工可能ですので、住宅の建築をご検討中の方はお気軽にご相談ください。

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現代の暮らしに合わせて快適な土間ライフを!

近代的に生まれ変わった土間は、住まう方のアイディア次第で様々な役割を持たせることができます。その一方で、元々は一つの空間だった空間が分割されたことにより、動線や間取りの設計が難解になったことも事実です。

せっかく室内に屋外空間を設けるのですから、その魅力を余すことなく引き出し、土間を存分に活用できるようにしましょう。

監修 安藤 正和

一級建築士/宅地建物取引士

メディケアサポートHABAや平成建設本社建替工事など、大型物件のプロジェクトリーダーを務める。