「ロフトのある住まい」と聞くとマンションやアパートを思い浮かべる方もいるかもしれませんが、今回は戸建て住宅を中心に、ロフトの基礎知識や有効な使い方をご紹介します。お施主様のこだわりや、注文住宅ならではの工夫を凝らした竣工写真を掲載しておりますので、ぜひ理想の家づくりに取り入れてみてください。
編集 平成建設
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目次
ロフトの基礎知識
ロフトとは?
欧米での元々の意味は「屋根裏部屋」のことですが、日本では一般的に、居室を二分割した際の上の層をロフトと呼んでいます。高さを変えながら連なっていくのがスキップフロアならば、同一階に高さが異なるレイヤーを配置するのがロフト。ロフトは新築一戸建て住宅だけの構造でなく、リノベーションで追加する方もいらっしゃいます。
ロフトの使用用途
ロフトを設けることで床面積に余裕が生まれるだけでなく、寝室やLDKをおしゃれに演出することもできます。ここでは代表的なロフトの使い方を3つご紹介します。
収納スペースとして有効活用
ロフトの一般的な利用方法です。建物全体の延床面積は建築基準法によって上限値が定められていますが、ロフトは幾つかの条件を満たせばその面積に算入する必要が無いため、より広い空間を造ることができます。
書斎スペースとして使用
LDKや寝室に接するロフトは程よい距離感で居室と繋がることができ、気分の切り替えに役に立ちます。趣味で集めたものを飾ったり、鑑賞したりする趣味の空間、憩いのスペースとしても◎。
ただし、延床面積から除外される「小屋裏物置等の空間」の条件を満たそうとする場合、収納を造作することに規制がかかることがあります。
お子様の秘密基地
部屋の中に高低差が生まれるロフトは、特にお子様に人気の空間。天井が低く、籠り感のあるロフトはお子様の秘密基地にぴったりです。子供部屋にロフトを設ける際には、ハシゴのデザインを可愛くしてもいいですね。頻繁に上り下りすることで運動にも繋がります。
予算を抑えるなら「ロフトベッド」がお薦め
ロフトを設けるのが難しい場合、ロフトベッドがお薦めです。家具の一種なので床面積には加算されませんし、不要になれば撤去も容易、更にコストも抑えることができます。市販されている商品もありますが、折角ならば新築に合わせてオリジナル家具を製作してみては如何でしょうか。
ロフトと建築基準法について
ロフトは特定の条件を満たすことで「小屋裏物置等の空間」と見なされ、住まいの延床面積から除外することができます。
ロフトの天井高さを1.4m以下にする
ロフトを延床面積に含めないようにするには、天井高さを1.4m以下にする必要があります。平均ではなく内法の一番高い部分が1.4m以下でなければいけないため、屋根の傾斜がきつい小屋裏にロフトを設ける場合、1.4mの高さに天井を設けることがあります。
ロフト直下の空間は天井高さを2.1m以上にする
LDKや寝室の一部であっても、収納空間であっても、ロフト直下の空間は2.1m以上の高さが必要です。吹き抜けを利用してロフトを設ける場合は、吹き抜けの高さが対象になります。
広さは設置する階の床面積の1/2まで
ロフトだけでなく、同一階に設けた小屋裏・床下収納の面積を合算して、設置階の1/2以下に収める必要があります。
これ以外にも、自治体によってはロフトに固定階段を設置できなかったり、ロフト内の窓の大きさやコンセントの設置に規制がかかることがあります。建築に関する法令は自治体によって細かいルールが異なりますので、土地を購入する際には必ずその地域のルールを確認しましょう。同様に、住宅会社やハウスメーカーは当該エリアでの施工実績がある企業を選ぶことをお薦めします。
上記条件を満たすことでロフトは「小屋裏物置等の空間」に分類され、延床面積に加算されなくなりますが、同時に居室(リビングや寝室のように長時間滞在する部屋)としての条件は満たせなくなりますのでご注意ください。
こちらの写真は一見するとロフトのようにも見えますが、実際には3階建てのお住まいです。居住性の高い空間にしたい場合、スキップフロアの導入をご検討ください。
ロフトと小屋裏収納(グルニエ)との違い
建築基準法上、ロフトは「小屋裏物置等の空間」に分類されるため、小屋裏収納(グルニエ)と同じものとして扱われます。ただしデザインには明確な違いがあり、一般的に開口を設けて居室と繋がっている場合は「ロフト」、居室と繋がっていない場合は「小屋裏収納」と呼ばれています。
ロフト付きの家のメリット
ロフトを設けることで使用できる空間が増え、暮らしにゆとりが生まれます。ここでは、新築一戸建て・リノベーション共にロフトを設けた際のメリットをご紹介します。
固定資産税を抑えることができる
「小屋裏物置等の空間」の条件を満たしたロフトは、固定資産税を算出する際にベースとなる「登記床面積」に含めなくても良くなるため、結果的に節税に繋がります。
空間を有効活用できる
ロフトは小屋裏だけでなく、吹き抜けの上部を利用しても設置可能です。代表的な間取りは、1階に設けた吹き抜けの上部1.4mをロフトにして、2階居室の収納にするというプラン。吹き抜けの開放感とロフトの収納力を同時に実現する、人気の間取りです。
居室の開放感と実用性が向上する
荷物をまとめてロフトに片付ければ居室から収納スペースを削減することができ、結果として部屋を広々と使うことができます。更に、ロフトは小屋裏収納よりもオープンな空間なので、居室と連続する空間として利用しやすい、アクセスしやすいため利用頻度が上がり、より実用的に活用できるという点もメリットです。
暮らしのアクセントになる
ロフトを設けることで居室にレイヤーが生まれ、空間にメリハリが生まれます。スキップフロアとの相性も良く、ロフトを上手く使えば、2階建て住宅でも3階建て住宅のような暮らしを楽しむことができます。また、ロフトの腰壁に木格子やアンティーク建具を利用すると更に視覚的な変化が生まれ、空間をおしゃれに彩ることができます。
ロフト付きの家のデメリット
階層が増えることで不便になる点もあります。デメリットの多くは設計の工夫で解決できますので、ロフトを設ける際には設計士と細かい点を相談しながら調整しましょう。
熱がこもりやすくエアコンが効きにくい
暖かい空気は上方に昇るため、小屋裏には行き場を失った熱が籠りやすくなります。そもそも、屋根に近い小屋裏は構造的に暑くなりやすく、エアコンを設置しても中々温度が下がりません。
小屋裏の温度を下げるためには、屋根の断熱工事をしっかり行う、窓は日が差し込まない方向に設けるなど、設計を工夫して対応しましょう。排熱のための換気扇もお薦めです。
掃除の手間が増える
床面積が増えるということは掃除の手間が増えること。特に天井の低いロフトでは腰を屈めて掃除しなくてはいけませんし、掃除機を持ってハシゴを上り下りするのは骨が折れます。ロフトには熱気が籠りやすいこともあり、掃除が行き届かないとホコリや荷物にカビが生えてしまうことも……
気軽に掃除ができるように、ロフトに小型の掃除機を設置しておくと便利です。ロフトは床よりも汚れないので、ハンディクリーナーでも十分清掃が行き届きます。
ロフトが無駄になる可能性がある
ロフトを設けたもののハシゴの上り下りが億劫になり、全く使わなくなってしまう例は少なくありません。後で後悔しないよう、実際にショールームや住宅見学会でロフトに上がってみて、有効に使えそうか検討しましょう。
使い勝手を良くするため、ロフトに固定階段を設けるプランもあります。ただし、固定階段を設置するとロフトの面積が狭くなってしまう点、固定階段の設置が許可されない自治体がある点には注意してください。
平屋にロフトを設ける場合
平屋といえば平坦な動線が特徴ですが、全ての居室に小屋裏が存在する点ではロフトと平屋は相性が良いと言えます。荷物をまとめて収納し、平屋ならではのフラットな空間を満喫する方、平屋はオープンすぎるので敢えて個室のような籠り感を求める方など、ロフトを設ける理由は様々です。
また、人間よりも主に猫たちのためにロフトを活用する愛猫家の方もいらっしゃいます。この場合は梁をキャットウォークとして活用したり、壁にキャットステップを設けることが多いようです。
需要の高い「ほぼ平屋」の住まい
近年、人気が高まる平屋のお住まいですが、実際に設計してみると少しだけスペースが足りなかったり、普段使わない空間が必要になったりということも……。そこでお薦めなのが、平屋のデザインを活かしながら一部だけ二階建てにする「ほぼ平屋の住まい」。2階には大収納空間や普段は使わない客間を配置し、通常の暮らしは1階のみで完結するよう設計することで、必要なスペースを確保しながら快適に暮らすことができます。
リノベーションでロフトを設ける場合に気を付けること
リノベーションで10㎡以上の増築工事を行う場合は確認申請が必要ですが、ロフトは「小屋裏物置等の空間」の条件を満たせば延床面積に含まれないため、確認申請を行わずにより広い空間を活用することができます。
とはいえ、現行の耐震基準を満たさない住宅(昭和56年以前に建築された住宅)の場合は安全性を重視し、構造上の補強もご検討ください。その分お金はかかりますが、安心に勝るものはありません。
ロフトを有効に活用した施工事例8選
平成建設で施工したロフト付きの戸建て住宅・リノベーション実例を、写真を交えてご紹介します。どの住まいもご家族のこだわりが随所に取り入れられていますので、理想の家づくりの参考になさってください。
施工事例1 ボルダリングのあるロフト付き住宅
2階リビングに設けたロフト。高さのある勾配天井を活かした配置です。階段とは別にボルダリングウォールを設置しており、身体を鍛えながら上り下りすることが可能。
書斎スペースにもなるスキップフロアを挟み、ロフトに繋がる固定階段。
ロフトからLDKを見下ろした眺め。
ロフトの下の空間にはブランコを設けました。お子様が楽しんで乗られています。
施工事例2 リゾートライフを楽しむロフト付き住宅
眺望の良い2階に設けた大開口LDK。湘南の海を最大限楽しめるよう、大開口に加えバルコニーにガラスの手摺りを採用しています。
ダイニングの天井を周囲より一段下げ、上部をロフトとしました。
ロフトからの眺め。ダイナミックな勾配天井が印象的なお住まいです。
施工事例3 ロフトを設けた平屋住宅
アースカラーで纏めたモダンな平屋住宅。近年、平屋住宅は老若男女問わずに人気の高い住まいです。
居室の上部にロフトを設置。荷物をまとめて収納することで、居住空間が広くなり、よりフラットな暮らしが楽しめます。
小屋裏を利用した大収納空間です。猫を飼われているお施主様向けに、ロフトの壁紙は遊び心のある猫柄をご提案しました。
施工事例4 勾配天井が印象的なロフト
小屋裏を利用し、大空間LDKの上部にロフトを設けたお住まい。シーリングファンを設置することで空間上部の空気が攪拌され、ロフトの熱気を逃しやすくなります。
固定階段を設置することでロフトを上り下りする負担が軽減し、「ロフトを作ったけれど使わなくなった」という事態を防ぎます。反面、階段を設置するスペースが必要になりますので、ご家族や暮らし方に合わせて選択しましょう。
手すりを木格子にすることで視覚的な圧迫感が減り、更に通風性も良くなります。
施工事例5 子供部屋にロフトを設けた住まい
子供部屋に造り付けのデスクを設け、背後にロフトを設置。階段風のハシゴで上り下りできます。
片流れ屋根の小屋裏を利用したロフトには、リビングの様子を見ることができる窓を設置しました。
リビングから子供部屋を見る。正面右に見える扉の上が子供部屋のロフトです。壁ではなく窓にしたことでリビングとコミュニケーションが取りやすくなりました。また、リビングのハイサイドライトの光が子供部屋まで届くようになり、より明るい空間になりました。
施工事例6 湘南の海を望むロフトのある家
2階LDKに設けられたロフト。スキップフロアを多用したお住まいの中で幾つものレイヤーが生まれ、湘南の海を様々な角度から鑑賞することができます。
ダイニングはリビングよりも一段下がっているため、ロフト下の空間は高さがあります。
ロフトの様子。LDKに設けたハイサイドライトは住まいの中で一番高い場所にある開口。湘南の海を見下ろす絶景を楽しむことができます。
施工事例7 猫が寛ぐロフトのある家
1階と2階を繋ぐ吹き抜け上部にロフトを設けました。現在は木格子が途切れている箇所にハシゴを掛け、昇降されています。
小屋裏に設けたロフトは、人間だけでなく猫の使い勝手も考慮して設計されています。奥に見えるのは猫専用通路ですし、丸い窓は奥行きを持たせ、愛猫が日向ぼっこできるようにデザインしています。
猫の通路は寝室に設置した見せ梁のキャットウォークへと繋がり、キャットステップを経由して2階とロフトを自由に歩き回れる間取りとしています。ちなみに、キャットウォークの下に見える壁のへこみは猫トイレ用のスペースです。
高い場所にある通路は猫たちもお気に入り。走り回ったり日向ぼっこをして寛いだり、ロフトを存分に活用しているそうです。
施工事例8 ロフトを追加した和室リノベーション
事務所に和室を増築したリノベーション。間取りを変更して水回りを追加しつつ、確認申請が不要な10㎡以内の増築に納めるという課題がありました。外観を統一するために下屋を設けつつ、和室をなるべく広く使えるようロフトを配置。元々あった事務所をより効果的に使えるよう間取りを変更しています。
ロフトへと続く、シンプルな和室の雰囲気に馴染むおしゃれなハシゴ。和室×ロフトの組み合わせを違和感なく仕上げるため、手摺りやハシゴのデザインを検討しました。
隣接する事務所から和室方向を見る。増築部分を10㎡以下に収めたため確認申請は不要でしたが、既存の家屋が性能評価を出していたので、一体化増築ということで改めて住まい全体で壁量計算を行い、資料と図面をお施主様にお渡ししています。
注文住宅は経験豊富な平成建設の設計士にお任せください
スキップフロアやロフトのような多層的な空間は、住まう方に合わせて一棟一棟丁寧に設計することが成功の鍵です。リビングに設置するのか、寝室に設置するのか、子供部屋に設置するのか、或いは複数の部屋をロフトで繋げるのかなど、暮らし方に合わせて間取りを決めましょう。
東京、神奈川、静岡にある平成建設のショールームでは、公式サイトには掲載されていない数多くの施工実例をご覧いただけます。経験豊富な設計士が新築・リノベーションの相談をお受けしますので、ぜひお気軽にご来場ください。
まとめ◆ロフトは生活を豊かにする空間
ロフトは主に空間を広く使うために設置されますが、デザイン次第では生活をおしゃれに彩るアクセントにもなります。節税や空間活用といった機能性だけでなく、ハシゴや階段の種類、ロフトの手すりの素材、リビングや寝室からどう見えるのかなど、内装の一部としてデザインにもこだわって設置したいですね。
リビングや寝室に設けたロフトをどのように活用するかは、住まわれるご家族のアイディア次第です。「こんな用途に使いたい」「こんな風な使い方を想定している」など、具体的なご要望があれば遠慮なくご相談ください。