愛車を守り、敷地を有効活用するビルトインガレージ。コロナ禍の中で自家用車での移動が増えるにつれ、その収納場所であるガレージにも注目が集まっています。今回はガレージを取り巻く現状をお伝えしつつ、おしゃれなガレージの施工事例や、ガレージが担う新しい役割についてご紹介します。
編集 平成建設
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目次
ビルトインガレージのある家
車の収納スペースには様々な形態がありますが、一般的に、壁で囲われているものはガレージ、柱と屋根だけで構成されるものはカーポート、屋根がない場合はシンプルに駐車場(駐車スペース)と呼ばれることが多いようです。
ガレージの中でも特に、建築の構造に組み込まれたものをビルトインガレージ(built-in-garage)またはインナーガレージ(inner garage)と呼びます。
従来のガレージは主に車やバイクを収納するスペースでしたが、近年、通勤に自転車を使う方が増えていること、スポーツバイクの人気が高まっていることなどから、サイクルポートとしての役割も果たすようになりました。
ビルトインガレージのメリットは、何と言っても防犯性が高まること。愛車を屋内に収納することで安全に保管できますし、風雨による車体の劣化を防げる他、海近のロケーションでは塩害による劣化も低減することができます。
また、雨が降っていても濡れずに乗降車できる点は、ご家族にとって嬉しいポイントでしょう。特に小さなお子様の送迎や大きな荷物を積み込む際には、屋外に比べて気温差が少なく、雨の吹き込まないガレージはとても有難い存在です。
屋内と屋外の中間的な空間として活用されるビルトインガレージは、DIYのような室内ではやりにくい趣味を楽しんだり、物置がわりに普段使わないアウトドア用品やスポーツ用品を収納したりと、多様な用途で活用されています。
愛車を守るためのビルトインガレージ
三方を壁で囲い、入り口に手動 / 自動のシャッターを設けたタイプ。防犯性が高く、愛車を大切に保管したい方にお勧めです。ガレージ内で整備を行ったり洗車したりできるよう、水道を引いたり、収納スペース、工具棚を設けることもあります。
かつては、ガレージと言えば自動車やバイクのための設備でしたが、自転車人気の高まりと共に、近年はガレージ内に自転車置き場を設ける方も増えています。
こんな方におすすめ!
車やバイク・自転車を安全に保管したい人、車やバイク・自転車の整備やカスタムを自宅で行う人、スポーツバイクが趣味の人
こんな設備がおすすめ!
電動シャッター、作業台、工具棚、水道設備、自転車用のスタンドや収納フック
敷地を有効活用するビルトインガレージ
駐車スペースを確保するため、1階の一部をガレージにしたタイプ。土地の広さに制限のある都市部に多く見られ、建物が3階建てになることも。庭代わりの屋外空間として活用されることも多く、DIYやアウトドア趣味を楽しむ場として活用されます。
こんな方におすすめ!
敷地いっぱいに住宅を建てたい人、キャンプや自転車などのアウトドアが趣味の人、DIYが好きな人
こんな設備がおすすめ!
雨を避ける庇、外物置、屋内と直接繋がる動線
土地の高低差を活かすビルトインガレージ
高低差のある土地を活かし、地下にビルトインガレージを設けたタイプ。
高低差がある土地は平地に比べて坪単価が安く、思わぬ掘り出し物件が見つかることも。地下ガレージは建物基礎部分を兼ねることもできるため、ガレージから建物への内部動線の確保、建築コスト面のメリットが期待できます。比較的安価な、北面接道かつ高低差がある土地を探して、地下にガレージを設ける計画もお薦めです。
寒暖差が少なく、静かな地下ガレージはホビールームにも適しています。
こんな方におすすめ!
家づくりを土地探しから取り組む人、ホビールームが欲しい人
こんな設備がおすすめ!
屋内通路(階段)、地下室
おしゃれなビルトインガレージを実現するために注意したいこと
「車庫+α」として活躍の場が広がるビルトインガレージ。しかし、内装やインテリアといった見た目だけにこだわると様々な問題が発生します。ここではビルトインガレージを設ける際に問題になることが多いポイントをご紹介します。
ガレージの内装に可燃材は使えない
ガレージ(自動車車庫)の壁・天井の仕上げには準不燃以上の建材を使うことが義務付けられているため、特殊な処理をしていない木材や防火性能の低い壁材は内装仕上げに使えません。
ガレージの内装には手入れのしやすい素材を選ぶ
ガレージにデザイン性を求める方が増えていますが、排ガスや洗車の際の水しぶきなどによって、ガレージの内装が汚れたり濡れたりすることがあります。お手入れのしやすい素材を選びましょう。
屋内からの直通動線を設ける
屋内から直接ガレージに出られる動線があると便利です。玄関とは別の家族専用の出入り口として、ウォークインシューズクローゼットや手洗いなどを一緒に設置される方もいらっしゃいます。
長時間滞在するなら快適性も考慮する
趣味を楽しむ空間としてガレージを使用するのであれば、長時間滞在してもストレスを感じないよう、エアコン、照明、通風のための窓なども併せて検討しましょう。
エクステリアとの調和を考える
ビルトインガレージは外部から目に入りやすく、住まいのイメージに大きく影響を及ぼします。おしゃれなビルトインガレージを目指すのであれば、ガレージ単体ではなく、庭や門、アプローチのデザインといった外構(エクステリア)との調和を考え、シャッターや天井、壁の色合い、素材などを選びましょう。
施工事例1 趣味の部屋が隣接するインナーガレージ
白い内装の、広々としたインナーガレージです。ガレージの奥に収納棚を設置し、物置としての機能も持たせました。ガレージ内部で快適に作業ができるよう、エアコンも設置しています。
ガレージには防犯性の高い電動シャッターを採用。ガレージに隣接する形で設けた趣味を楽しむ小部屋は、ガラス張りにすることでいつでも愛車を眺めることができます。
ガレージのシャッターを下ろしていても、中庭から採光できるため明るいホビールーム。スポーツ用品やアウトドア用品の手入れをしたり、オーディオを視聴したり、読書をしたり……様々な趣味を楽しむ空間として活躍しています。
施工事例2 書斎に隣接したビルトインガレージ
リビングや寝室など生活の拠点は2階に集約し、1階には書斎と3台分のビルトインガレージを配置したお住まい。SE構法を採用することで柱のない大空間ガレージが実現しました。1階と2階の壁色を変えることで三角形の家のかたちを強調しています。
奥に見える扉は出入口ではなく、屋外収納です。お施主様のご希望で、階段下を利用して設けました。手前の扉は玄関へと直通する勝手口。洗車のことを考え、ガレージ内に水栓を設けています。
リビングや寝室といった生活空間は2階に集約。LDKは和モダンテイストでシックに纏めました。リビングと寝室が同じ階にあるため、生活動線も短くなります。
施工事例3 モルタル仕上げのビルトインガレージ
杉板と塗壁、金属サイディング、ガルバリウム鋼板で構成された外観。1階には2台分のインナーガレージと物置を設けました。
床はコンクリート、天井は木毛セメント板、内壁はモルタル仕上げ。エントランスの羽目板(準不燃材仕様)とのコントラストが美しいガレージです。2台のスペースを行き来しやすいよう、ガレージの中の仕切り壁は完全には閉じていません。
木材を効果的に取り入れたおしゃれな大空間LDK。床にはナラ材、壁にはOSBボードを使用し、それぞれの「木」が持つ異なる質感を活かしています。1階にガレージ、2階にリビングを配置することで、昼間滞在するLDKが非常に明るく開放的な空間になりました。
施工事例4 ショールームのようなインナーガレージ
鮮やかなブルーの外壁が印象的なお住まい。2階建て+小屋裏という構造です。将来的に太陽光発電を載せることも考慮し、片流れの屋根を採用しました。
ガレージの奥には収納空間を設け、多目的に使用できるようにしています。廊下側の壁面にはガラスの大開口を設け、対面の壁には自転車収納用のフックを取り付けました。
車高の低い愛車の見せ方を考慮し、エントランスとガレージをフラットに接続。ガラスサッシを開けば玄関からそのままガレージに出ることができます。廊下に大きな開口部を設けたことで、その先にあるLDKからいつでも愛車を眺めることができるようになりました。
LDKのキッチンは奥様のお好きな北欧調でまとめました。腰壁の板の色は、映画「かもめ食堂」をイメージした「氷河色」。キッチンの奥にパントリーを設け、納戸・ウォークインシューズクローゼットを通ってぐるりと回遊できる間取りとしています。
施工事例5 RC造のビルトインガレージ
ブロック状に突き出たビルトインガレージと広々としたポーチが特徴的なRC造のお住まい。ガレージにはシャッターがついています。
書斎に設けた大開口から、直接ガレージ内に出入りすることが可能。車の整備をしたり、DIYを楽しんだり、趣味の時間を存分に楽しむことができます。書斎の土間は玄関と直接繋がっているため、靴を脱がずに移動できます。
LDKにはオープンサッシの大開口を設けました。車を寄せれば、大型荷物の積み下ろしも楽々できます。前庭でのプール遊びやバーベキューなど、様々なアクティビティと相性の良いプランニングです。
施工事例6 木の温もりを感じるビルトインガレージ
高級感のある吹き付け塗装にアクセントの木目が映える外観。ガレージ脇の植栽、玄関ポーチの木格子、電動シャッターの木目調カラーと、外構・建物・ガレージが調和するよう木の質感を取り入れ、全体のバランスを取っています。
ガレージの床はコンクリート、天井・壁には木毛セメント板を採用しました。床の一部を高くすることで車止めにすると共に、屋内との段差を解消するステップとしています。
ご家族専用のウォークインシューズクローゼットは、ガレージと玄関、両方と繋がっています。用途に合わせて通路を使い分けることができ、非常に便利。
コロナ禍以降、帰宅後すぐに手洗いできるよう、玄関の近くに洗面台を設けるプランが人気です。こちらのお住まいは、玄関だけでなくガレージ内の通路からの動線も考慮して洗面台を設けました。
施工事例7 シックモダンなビルトインガレージ
高級感のあるガルバリウム鋼板を用いた外観。黒い外壁に映えるよう、軒天には色鮮やかなレッドシダーを用い、スタイリッシュな印象にまとめています。
ビルトインガレージの天井にはルーフボックスを収納するツールを設置。壁面には自転車専用のフックが取り付けられており、サイクルポートとしての役割も果たします。突き当りに見えるのは直接室内に繋がる専用出入り口と、書斎の窓です。
接道との段差を解消するため、ガレージは住まいよりも半階低くなっています。ガレージに設けた通路は玄関脇に設けた家族専用のウォークインシューズクローゼットに接続。WISCはただの収納ではなく、効果的な照明計画によってショップの陳列棚にも負けないような空間となりました。
ガレージに面した書斎は、本棚と机を造り付けにした機能的なスペースです。段差を活かした窓からは、ガレージ全体を見下ろすことができます。
施工事例8 高低差を活かしたガレージハウス
高低差のある土地に建つ、ビルトインガレージ付きの3層のお住まい。前面道路よりも高い位置にあるため、ぱっと見ると3階建てに見えますが、法規上ガレージは地下1階に相当します。
ガレージの内装はコンクリート打ち放し。広さに余裕を持たせ、ガレージ内で車の整備ができるようにしました。
ガレージの先にはご家族専用の玄関を設けました。地下1階、地上2階のお住まいなので、移動に便利なホームエレベーターを設置しています。
リビングは眺望に恵まれた最上階に配置。住宅街の中に建ち、採光しづらい1層目にはビルトインガレージを、眺望の良い3層目にはリビングを。土地の高低差を活かしたお住まいとなりました。
ガレージの用途や住まい全体のイメージを考慮し、デザインを検討しましょう!
愛車を展示するショールームのようなガレージ、趣味を楽しむスペースを備えたガレージ、物置を兼ねる収納力を重視したガレージなど、用途によってガレージの大きさや求められる設備は変わります。まずは「どのような用途でガレージを使うのか」をよくご検討ください。
その上で、ガレージのデザインとエクステリアのデザインを同時に進め、住まい全体の素材感や色合いのバランスを取ることをお薦めします。