【事例あり】木造3階建て住宅の魅力や検討する際のポイント | 平成ライフスタイル

【事例あり】木造3階建て住宅の魅力や検討する際のポイント

木造3階建て外観 注文住宅

ここ数年、省エネ性能を高めた木造建築物を増やしたいという政府の方針を受けて、木造3階建て住宅に対する規制緩和が続いています。今回は規制緩和の内容や木造3階建て住宅のメリット・デメリット、計画時に気をつけるポイントなど、実際の施工事例を踏まえて詳しくご紹介します。

編集 平成建設

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なぜ木造3階建て住宅が推奨されているのか?

そもそもなぜ政府は木造の建築物を増やしたいのでしょうか? その背景には、近年、世界中のあらゆる分野で叫ばれている「持続可能な社会」への配慮 ―― 脱炭素社会への取り組み ―― があります。

木造は鉄筋コンクリート造(RC造)や鉄骨造(S造)に比べ、建築時のCO2排出量が4割程度少ない、低炭素な建築工法です。加えて、木材の利用が増えれば国内の林業も興隆しますし、林業が盛んになれば森林の整備が進みます。森林が整備されればCO2の固定量が増え、脱炭素社会へ一歩近づくことができます。これら項目は、SDGsにおける「13.気候変動に具体的な対策を」(=CO2削減)「15.陸の豊かさも守ろう」(=森林の維持)といった目標にも合致しており、政府が木造建築を勧める大きな理由になっています。

更に近年、都市部で戸建て住宅のニーズが高まっていること、小規模宅地が増えたこと、新しい技術の開発により、木造建築物でも十分な耐火性能・耐震性能を持つことができるようになったことから、木造の中でも特に、3階建て住宅の規制緩和が進められるようになりました。

木造3階建ての主な建築基準について

家を建てる際には、着工前に計画が建築基準法に適合しているか確認し、認可を受ける必要があります。これを「建築確認」と言い、建築確認を依頼することを「確認申請」と言います。

防災の観点から、木造三階建ての住まいには様々な規制があります。実際の業務は設計事務所や住宅会社が行いますが、住まいはご自身の大切な資産ですので、家を建てる前に、一通り建築の流れや概要を理解しておくことをお薦めします。

構造計算について

「構造計算」とは、重力(自重・積雪)や風力、地震力に対して、建物の構造がどのような影響を受けるかを計算すること。また、構造計算を用いて建物の安全性を確保する業務を「構造設計」といいます。

構造計算では、柱や梁の強さ、柱接合・梁接合部の強さ、耐力壁の量や配置、基礎の強さなどが、外部からの力に耐えられるかを計算します。一般的な木造2階建て建築物の場合、建築確認時に構造計算書を添付する必要はありませんが、木造3階建て住宅の場合は必須となります。

耐力壁について

地震や強風のような水平方向に加わる力(横方向に加わる力)に抵抗するのが「耐力壁」です。耐力壁は、斜めに補強材を入れた「筋交い」や、構造用合板や木質ボードを用いた「耐力面材」によってつくられます。構造設計では、耐力壁の量が十分か、配置されている箇所が適切かを確認します。

住宅性能表示と長期優良住宅について

住宅建築のルールを定めているのが建築基準法であるのに対し、住まいの品質を客観的に評価するのが住宅性能表示制度(耐震等級)や長期優良住宅制度です。

これら制度を用いて、品質に優れた住まいであるという認定を受けることで、各種減税やローンの優遇措置、地震保険料の割引などを受けることができます。

地盤調査と地盤改良について

建物を建てる前に、その土地の「建物荷重に耐えられる力(地耐力)」を確認するための地盤調査が必要となります。また、調査の結果、必要地耐力が足りないと判明した場合は、地盤を人工的に改良する「地盤改良」を行います。

地盤改良の方法としては、セメント系の固化剤で表装を固める「表層改良工法」や、地盤に固化材を混ぜながら杭状に補強する「柱状改良工法」、コンクリートや鋼管の杭を打ち込む「鋼管杭工法」などがあります。3階建て住宅は2階建て住宅よりも建物の重量があるため、地盤改良のコストが増加することがあります。

防火地域・準防火地域での木造3階建て建築について

都市計画法や建築基準法によって定められた、市街地における火災の危険を防除するための地域を「防火地域」「準防火地域」と呼びます。主に駅前や繁華街など、建物が密集しているエリアが指定されており、火災発生時に周囲に延焼しないよう様々な規制がかけられています。

防火地域・準防火地域に3階建ての住居を建築する場合、建造物は耐火建築物・準耐火建築物にする必要があります。木造でも耐火建築物・準耐火建築物の条件を満たすことは可能なのですが、今までは規制の多さや技術面の問題から敢えて木造を選ぶメリットが少なく、RC造やS造で建築することが一般的でした。

しかし、幾度かの建築基準法改正を経て、現在は以前よりも木造3階建て住宅が建築しやすい環境になっています。

防火地域での建築制限の緩和(2000年)

防火地域では原則100㎡を超える木造建築物は建築できませんでしたが、法改正によって木造「耐火建築物」ならば建築可能になりました。

準防火地域での建蔽率の緩和(2019年)

準防火地域の耐火建築・準耐火建築物は、建蔽率が10%緩和されることになりました。前述の建築制限緩和と合わせて、木造でもより広い住まいを建築することが可能になりました。

敷地内通路の緩和措置(2020年)

災害に備えて、住宅は敷地内に避難上必要な通路を設けることが義務付けられています。延べ床面積が200㎡未満の木造3階建て住宅は、これまで150cm幅の敷地内通路が必要でしたが、法改正によって幅90cmに緩和されました。これにより間取りやデザインの自由度が広がりました。

木造3階建て住宅の魅力

ここでは木造住宅がRC造やS造よりも優れている点、また、3階建て住宅の魅力についてご紹介します。

木造建築の魅力

SE構法ならではの大空間

一般的に木造住宅はRC造やS造に比べて建築費用が安く、工期が短くなるので、総合的な建築コストを抑えることができるとされています。また、近年は金物工法の開発が進んだことで、今まで木造建築物ではできなかった大開口・大空間のデザインも可能になりました。

木造でも大開口・大空間が可能に

木造軸組工法の一種である「金物工法」は、頑強な構造材と特殊な金物で接合部を強化し、梁と柱で水平力に耐えるフレームを作る工法です。このフレームのお陰で耐力壁を最小限に抑えることができ、木造でもRC造やS造のような大空間・大開口を作ることができるようになりました。

木造3階建て住宅の草分け的存在・SE構法

独自開発した金物、均一な品質を保つ構造材、大型建造物並みの精密な構造計算によって、大開口・大空間の木造3階建て住宅を実現するSE構法。高い耐震性能に加え、デザインの自由さ、リフォームに柔軟に対応できる拡張性などが高く評価されています。

3階建ては敷地を最大限に有効活用できる

狭小地でも十分な部屋数・延べ床面積を確保できるのが3階建ての大きなメリット。建築費用は割高になりますが、土地の取得代金を抑えることができるので、特に地価の高い繁華街や都市部では総合的な建築コストは低くなります。

ビルトインガレージ

都市部でお薦めなのがビルトインガレージ付きの3階建て住宅。駐車スペースと居住空間を縦に並べることで、外部に駐車場を借りなくても車を維持することができますし、屋内とガレージを直接繋げれば雨に濡れずに乗降車することができます。

大きな吹き抜けがもたらす開放的で日当たりの良い空間

大空間吹き抜け

複数のフロアを繋ぐ吹き抜けは、3階建てと相性の良い空間。1階に水回りなどをまとめつつ、日当たりの良い2階・3階を吹き抜けで繋いで、LDKや寝室を配置する間取りが人気です。隣家との距離が近い場合は、住まいの中心に吹き抜けを設け、天井のトップライトから採光するプランがお薦め。

二世帯住宅や住居兼事務所との相性が良い

3階建て住宅は、動線や生活エリアをフロア単位で分けやすいのが特徴。二世帯住宅の場合、子世帯と親世帯の生活スペースをフロアごとに分けることで、程よい距離感が生まれます。また、住居兼事務所の場合、1階に事務所を、2・3階に住居を配置し、玄関や動線を分けることで快適に生活することができます。

眺望に恵まれている

屋上

3階建て住宅の眺望の良さを活かすなら、ルーフテラス・ルーフバルコニーを設けましょう。特に庭を設けることが難しく、プライバシーが問題になりがちな都市部では屋上付きのプランが人気です。

木造3階建て住宅を検討する際のポイント

規制緩和が進んでいるとはいえ、木造3階建て住宅は特殊な建築物です。ここでは木造3階建て住宅を建築する際の注意点について説明します。

3階建てである必要性を検討する

地盤改良の費用や暮らし始めてからの光熱費、建材の高騰に伴う建築費用の値上がりなど、3階建て住宅は2階建て住宅に比べてコストが高くなります。最初から3階建てと決め込まずに、まずはどのような暮らし方をしたいのか設計士に相談してみましょう。思い描いている暮らしが2階建て住宅でも実現するのならば、それに越したことはありません。

土地の特性と設計士の提案力

高低差を利用すれば、2階建て住宅でも3階建て相当の眺望を得ることができるかもしれません。また、スキップフロアやロフトを効果的に利用して、2階建てでも3層・4層の住まいを建築することも可能です。

土地の制約を確認する

土地ごとに様々な制約があります。土地を購入したのに3階建て住宅を建てられなかった、希望した間取りにできなかったというようなトラブルを防ぐため、土地の契約前に必ず施工会社や設計士にご相談ください。

用途地域による各種制限

「第一種低層住居専用地域」や「第二種低層住居専用地域」などは、その名の通り建築物の高さに制限が掛けられているため、一般的な3階建て住宅は建築できません。また、商業施設の建築も制限されるため、高さをクリアしても店舗付きの住居は建築できないことがあります。

建蔽率と容積率

建蔽率とは、敷地面積に対する建築面積の割合のこと。容積率は敷地面積に対する延べ床面積の割合のことで、この二つの数字によって建築可能な建物のおおよそのサイズ感が決まってきます。三階建て住宅は延べ床面積が大きくなりがちなので、容積率に注意しましょう。

斜線制限

北側の住まいに対する日当たりに配慮するのが「北側斜線制限」、隣接する住宅の日当たりや通風に配慮するのが「隣地斜線制限」、同じく隣接する道路の採光・通風を確保するのが「道路斜線制限」です。日当たりや通風を阻害してしまう場合は境界線から建物を離したり、建物の高さを抑えたりする必要があるため、デザインや間取り、建築可能な面積に制限がかかる場合があります。

その他、自治体が独自の規制を設けている場合もあるので注意してください。

生活動線を意識した間取りにする

三階建て住宅は、フロアごとに役割を分割できる点が強みですが、階段の上り下りが増加すれば、日常生活を送る上で大きな負担になります。実際の暮らし方を想定しながら、日常生活は一つのフロアで完結するように間取りを調整しましょう。ご家族に段差が苦手な方がいらっしゃる場合、また、老齢期を見据えるのであれば、ホームエレベーターの設置も選択肢に入ってきます。

冷暖房の効率をよくする

温かい空気は上方に溜まりやすい上、周囲に遮るものがなくて日当たりが良い、屋根に近いといった理由から、上階は暖かくなりがちです。逆に、1階は冷気が蓄積しやすい、近隣家屋の影で日照を得にくいなどの理由により寒くなりがち。住まいの中で寒暖差があるのはあまり良い状態ではありませんが、3階建ての場合はこの寒暖差が更に大きくなる傾向があります。

住まいの中の寒暖差を小さくし、室温を均一に保つには全館空調がおすすめです。全館空調は、廊下や玄関、トイレなども居室と同じように暖めるため、急激な寒暖差で発生する「ヒートショック」の抑止にも役立つと言われています。

暖房効率を高めるために、住まいの断熱性能を高める工夫も施しましょう。対策として、断熱効果の高い窓を導入する、断熱性能の高い外壁材を使用する、躯体の内部に隙間なく断熱材を充填するなどの方法が上げられます。

3階建ての建築実績が豊富な施工会社に依頼する

3階建て住宅を建築する上で、工事や段取り、様々な申請がスムーズに進むように、過去に多くの物件を手掛けている施工会社に依頼することをお薦めします。

木造3階建て住宅の施工事例

 

3階建てならではのフロア配置、屋上やバルコニーの活用、ビルトインガレージの併設など、平成建設で建築されたこだわりの詰まったお住まいを、写真を交えてご紹介します。

施工事例1 斜線制限をデザインに取り入れた木造3階建て住宅

斜線制限ぎりぎりのボリュームを確保した木造3階建て住宅

最大限のボリュームを得るため、ほぼ斜線制限をトレースした外観。塗壁の質感や窓の配置によって、機能的なだけでなくデザイン性にも優れた外観となりました。

3階建ての2階に設けた吹き抜け付きのLDK

1階には水回りなどをまとめ、LDKや居住スペースは、日当たりが良く人目が気にならない2階・3階に配置しています。

高さのある勾配天井

天井が高く、明るい日差しが降り注ぐ心地よい3階。建築時はサブリビングとして設計されていますが、壁を設けることで個室に転用することもできます。

施工事例2 ガレージと屋上を設けた木造3階建て住宅

重厚なタイル貼りが印象的な外観の3階建て住宅

重厚感のあるタイル張りが印象的な住まい。重めのタイルですが、斜線制限をデザインに取り込むことで軽やかな印象になりました。

1階に設けたガレージ

1階にはガレージを設けました。敷地の面積が限られがちな都市部では、建蔽率・容積率が高めに設定されていることが多く、ビルトインガレージや3階建て住宅を建てる方が多くいらっしゃいます。

1階の窓の外には目隠しの格子を設置した

1階に設けたのは客室を兼ねる和室。通りからの視線を遮るために格子の目隠しを設置しています。

都市部では屋上空間が庭の代わりになる

屋上には庭代わりのルーフテラスを設けました。周囲の視線を気にせずに寛ぐことのできる特別な空間です。

施工事例3 ビルトインガレージとビルトインガレージとルーフテラスを設けた木造3階建て住宅

シックな3階建て住宅

建物のボリュームを変えることで変化を持たせた外観。1階の窓は抑え目に、生活の拠点である2階・3階の開口部は大きめに設定しています。

3階建て住宅の1階に設けたビルトインガレージ

1階にはシャッター付きのビルトインガレージを設けました。エントランスの土間と直接繋げることで、屋外に出ずとも車に乗降できる、便利な動線が生まれます。

柱のない大空間LDK

2階に設けた一つながりのLDK。柱のない大空間はSE構法ならでは。眺望に優れた一角に和室コーナーを設けました。

3階に設けた軒の深いルーフバルコニー

3階に設けた、深い軒のルーフバルコニー。天井に明り取りを設けることで、屋根があっても明るい空間となりました。

施工事例4 南面に開口を設けた木造3階建て住宅

2階・3階にバルコニーを設けた3階建て住宅

日当たりの良い南面に開口をまとめた木造3階建て住宅。異なる素材感の組み合わせが、モダンな印象を与えます。

2階と3階を繋ぐ吹き抜け

1階には客間を配置し、居住空間は上階へ。2階と3階は明るく開放的な吹き抜けで繋がります。2階にも3階にも庭代わりに使える奥行きのあるバルコニーを設けており、外観上のアクセントにもなっています。

3階に設けた洗面

こちらのお住まいは、眺望に恵まれた3階に浴室を設けました。入浴しながら街を見下ろすことのできる、憧れの空間です。

施工事例5 1階にエステを設けた店舗併用3階建て住宅

エステ併設の3階建て住宅

L字型に棟を組み合わせた外観。住宅のエントランスは東棟に、エステのエントランスは西棟に設けることで、それぞれの動線を分けています。

店舗併用住宅の1階に設けたエステサロン

1階はエステティックサロン。施術室はゴージャスなデザイン。

2階に設けたLDK

2階・3階には居住空間を配置。大空間LDKの掃き出し窓の先は、庭代わりにも使える広いバルコニーとなっています。

施工事例6 吹き抜けで繋がる木造3階建て住宅

スッキリとしたフォルムの3階建て住宅

玄関前に2台分の駐車スペースを確保した、縦に長く、スッキリとしたフォルムの3階建て住宅。

2階・3階に設けた吹き抜け付きのLDK

こちらのお住まいも、LDKや寝室は2・3階に集約。LDKは仕切りのない一繋がりの大空間としつつ、床高や天井高を少しずつ変えることで、キッチン・ダイニング・リビングを緩やかに区切っています。

ダイニング上部に設けた吹き抜けと3階廊下

ダイニングの上部は吹き抜けとしました。日当たりの良い南側に窓を設け、明るい光が降り注ぐ開放的な空間としています。

吹き抜けに面する3階回廊

東西の居室を繋ぐ3階の回廊。階段の壁面には本棚を造り付け、ライブラリースペースとしました。

施工事例7 二つの窓から採光する木造3階建て住宅

十字に渡した木材が印象的な外観

建物の形状、十字に渡した木材など、住宅地の中でもぱっと目を引く印象的な外観の3階建て住宅。

窓の配置を工夫することで外部からの視線をコントロール

視線が気になりがちな1階は、窓の配置を工夫することで外部からの視線をコントロールしています。

南北の窓から光を導く大空間LDK

2階は一繋がりのLDK。隣家が東西に迫っているため、南北に設けた窓から住まいの中心まで光を導きます。

吹き抜けに面して窓を設けた3階居室

3階の居室は、階段吹き抜けに面して採光窓を設けました。最上階の強みを生かした勾配天井により、より広さを感じる空間です。

まとめ◆脱炭素社会の実現に向けて

木材は太陽エネルギーで生産することができ、植林、伐採、利用を経て、最後は土に還り次世代の糧となる「持続可能な資源(サスティナブル・マテリアル)」。国土の6割が森林である日本にとって、有効に活用していきたい大切な資源です。

脱炭素社会への転換は世界的な流れであり、建築における木材の利用は今後も推進されていく見込みです。

「脱炭素社会」や「持続可能な社会」という言葉は別世界の話のように聞こえますが、住宅建築を通して社会に貢献できるとなれば、ぐっと身近に感じることができると思います。新築の際には、木造住宅や木造3階建て住宅をぜひご検討ください。

監修 安藤 正和

一級建築士/宅地建物取引士

メディケアサポートHABAや平成建設本社建替工事など、大型物件のプロジェクトリーダーを務める。