新型コロナウィルスの流行は、一見すると無関係に見える分野にも大きな影響を与えています。住宅の間取りもその一つ。外出制限を受け、リモートワーク用の書斎やワークスペースの需要が高まったり、光熱費を抑える省エネ住宅が注目されたり、お子様の遊び場として中庭が人気になったり、食品や生活雑貨を貯蔵するパントリーが必須になったり……等々。
同時に、従来の間取りに、感染症予防のための工夫を取り入れるプランも増えています。今回はその中でも代表的な、玄関手洗いの設置についてご紹介します。
編集 平成建設
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目次
玄関に手洗い場を設けるメリット
現在、感染予防対策として玄関に手洗い器を設置する方が増えています。玄関先に設置した手洗い場には、感染症予防だけに留まらない様々なメリットがあります。ここでは、玄関に手洗いを設ける代表的なメリットを4つご紹介します。
1.感染症対策として有効
玄関に手洗い器を設置する最大のメリットは、帰宅後すぐに手洗い・うがいができること。元々、手洗い器は住まいの奥にある洗面脱衣室に設置されることが多かったのですが、新型感染症の流行を経て、帰宅後真っ先に手を洗いたいと思う方が増えたようです。特に小さなお子様は手を洗う前にあちこち触ってしまうことが多く、保護者の方は、どうやって帰宅後すぐに手を洗わせるかで苦労されているかと思います。
玄関土間や玄関ホールに手洗い場を設ければ、帰宅後にすぐに手を洗うことができ、お子様に手洗いを習慣づけるのにも役立ちます。
手洗い・うがい・マスクの着用など、新型感染症対策を徹底した結果、インフルエンザの罹患数が例年に比べ大幅に減少したという話もあります。帰宅直後に手洗い・うがいを行うことは、新型コロナ感染症以外の感染症予防にも効果が期待できます。ぜひ今後も続けていきたい「新しい生活習慣」ですね。
2.来客用の手洗いとして活用
お客様が手を洗ったり身支度を整えたりする時、どこを使っていただくかという問題は、新型感染症が流行する以前からありました。
手洗い器や鏡を備えた洗面化粧台は概ね洗面脱衣室にありますが、洗面脱衣室といえば、家族が使う歯ブラシやコップ、メイク用品が並べてあったり、洗濯物がランドリーボックスに積まれていたり…… 生活感に溢れた空間をお客様に見せるのは抵抗感があるという方も多いのではないでしょうか。
玄関や、玄関とリビングを繋ぐ廊下に手洗い器を設置すれば、お客様にプライベートな空間を見せることなく手洗いを済ませていただけます。トイレの手洗いと兼用できるよう動線を一つにまとめ、トイレの入り口付近の廊下に手洗いを設けるのもお薦めです。
3.玄関近くの水栓として利用
キッチンやバスルームといった水回りが玄関から遠い場合、玄関・アプローチでも自由に水を使えるよう、水道を配管し、外水栓や内水栓を設けることがあります。玄関に手洗器を設置すれば、帰宅時に手を洗うだけでなく、植物に水をやる、掃除に使う、靴や衣服の汚れを落とすなど多様な使い方ができます。
外水栓は、洗車や水撒きなど周囲に水が散ることを気にしなくて良い用途に向いています。反面、屋外なので素材が劣化しやすい(汚れやすい)、雨天時に使おうとすると傘が必要になる、深夜は音が響くため使いにくいと言った点はデメリットになるでしょう。内水栓の場合は屋内にあるので天候や時間帯の影響は受けませんし、耐久性もそれほど気にする必要がないので、好きな素材をデザインに組み込むことができます。
4.玄関で身支度を整えることが可能
手洗い器の近くに鏡を設置すれば、ただ手を洗うだけのスペースではなく身だしなみを整えるスペースにグレードアップします。鏡を設置するならば、インテリアとして主張しすぎない、シンプルなウォールミラーがお薦め。鏡の設置と共に手洗い場の壁面にタイルを貼ることで、玄関先がおしゃれな空間に生まれ変わります。
手洗い器と鏡をセットで設置しておけば、洗面化粧台が混雑する朝など、玄関の手洗いで身だしなみを整えることもできて便利です。
玄関に手洗い場を設置する際のポイントや注意点
キッチンやバスルームとは違い、一般的に玄関は水を扱う場所とは考えられていません。ここでは玄関先に手洗い場を設ける際に注意するべき4つのポイントをご紹介します。
1.動線を考えて間取りを決める
手洗い器を設置することで玄関スペースが狭くなりますし、設置する場所によっては生活動線に影響が出ることもあります。逆にコンパクトに作りすぎて、暮らし始めてから作業台を作ればよかったと後悔することも。玄関に手洗い場を設ける際は、実際に玄関手洗いを設置しているショールームに赴き、身体を動かしながら動線やレイアウトを検討してみましょう。
同様に、手洗器・化粧台のサイズ感を確認することも重要です。図面上はコンパクトに見えたのに、実際に配置してみたら想像以上に圧迫感があった……ということがないように、メーカーの展示場でサイズ感を確かめることをお薦めします。
下駄箱を利用してコンパクトな手洗い場を設ける
下駄箱と手洗い器を組み合わせた造作下駄箱は、下駄箱の奥行きを活かして手洗い場を設けるため、無理なくスペースを確保することができます。下駄箱の一部を水回り収納にすれば石鹸や消毒薬を収納できますし、下駄箱の面材にタオル掛けを設置できるのも◎。シンプルな手洗い器よりも使い勝手が良いのが特徴です。
洗面ボウルと下駄箱が一体化した製品も販売されていますが、せっかくのお住まいですから、インテリアや住まう方の好みを反映したオリジナルの下駄箱を製作してみてはいかがでしょうか。
WISC・玄関土間 を利用して多目的に使える手洗い場を設ける
玄関に隣接して設けた、ウォークインシューズクローゼットや土間の中に手洗いを設けるプランも人気です。来客動線と家族動線が分かれていること、ある程度の広さを確保できることから、鏡や収納を備えたしっかりとした洗面化粧台を設置することが多いようです。併せてコート掛けや鞄掛けを設置すれば、手洗いだけでなく毎朝の身支度を行う場所にもなります。出勤時間と通学時間が重なり、洗面所が混雑するというご家族にお薦めです。
玄関ホールや廊下に手洗い器を設置する
ウォークインシューズクローゼットは設置していないし、玄関にも手洗い場を設けにくい……という場合は、玄関ホールや廊下に手洗い場を設置しても良いでしょう。限られた玄関スペースに無理やり手洗いを設置して、使い勝手が悪くなっては本末転倒です。階段下や廊下の突き当りなど、普段使わない空間を有効活用するケースや、目隠しの壁を設けて手洗い場を設置するケースなどがあります。いずれもポイントは、扉やドアノブに触れずに手を洗えるオープンな洗面であること。帰宅動線・来客動線を考慮する必要がありますので、設計士と良く相談して進めましょう。
2.給排水管の工事費用を計算する
水栓を設置するためには給排水管の工事が必要になります。新築住宅の場合、配管を一本増やし、見栄えの良い手洗い器を設置するコストはおおよそ10万~25万程度かかります。しかし、建築後に新たに水栓を設ける場合は、壁・床の工事費用や配管のルート取りによって施工コストが変化するのでご注意ください。
3.水撥ね対策をする
玄関土間は濡れることを想定していますが、壁はそうでもありません。玄関の壁にはLDKや廊下と同じ素材が使われることが多く、手洗いの際に水が撥ねて染みが生じたり、素材の劣化が進んだりする可能性があります。
玄関に手洗い場を設ける際には水撥ねを考慮し、壁には耐水性の高い素材を採用しましょう。インテリアに合わせて様々なサイズ・色・柄が選べるタイルか、シンプルにまとめたいならば単色の防水パネルがお薦めです。
木製のカウンターを設けたり木製下駄箱に洗面ボウルを設置したりする場合は、天板の劣化にも注意が必要です。水撥ねぐらいで腐朽はしませんが、ふき取りが不十分だと表面に水跡が残ってしまいます。木を使う場合は耐水性のある塗装を施し、こまめなメンテナンスを心がけましょう。
4.玄関の雰囲気に合わせる
住まいの奥に配置される洗面化粧台と違い、玄関先に設けた手洗いは多くの人の目に触れます。洗面台を造作するのであれば、玄関の一部としてインテリアと共通性を持たせたデザインを採用しましょう。
華やかなモロッカンタイルやアンティークな真鍮のタオル掛け、インダストリアルな洗面ボウル、マリンランプの照明などなど……造作の洗面台は個性が出やすく、玄関インテリアの中心となります。
自動水栓のメリット・デメリット
感染症予防対策として、個人宅にも、センサー式の自動水栓を導入するケースが増えています。水栓金具に触れずに手洗いできる点が大きなメリットですが、価格が高い、故障時のパーツ交換が大掛かりになる、手を洗う以外の用途に使いにくい、といった点にもご注意ください。
玄関先には手洗いがメインの自動水栓、洗面脱衣室には何にでも使える通常の水栓と言う風に、二種類の水栓を使い分けると良いでしょう。
玄関におしゃれな手洗い場を設置した施工事例7選
平成建設で施工した、玄関や玄関ホールに手洗いを設けた実例をご紹介します。
施工事例1 シンプルで機能的な玄関手洗い
玄関ホールに設けられた洗面化粧台。大きな鏡と収納スペースを持ち、使い勝手は抜群です。玄関に隣接してウォークインシューズクローゼットも設置されているため、朝の身支度はこのスペースで完結できます。カウンターにはお施主様がご用意された無垢板を使用。
施工事例2 踊り場のコーナーを活用した玄関手洗い
玄関のすぐ横にある、階段の踊り場を活用した手洗いスペース。限られた空間を最大限に活用するため、洗面台を斜めに配置しました。手洗い場の横にはトイレを配置しており、トイレの手洗いも兼用。スキップフロアを利用した、コンパクトにまとめた動線が特徴です。
施工事例3 木材と陶器のボウルを組み合わせたおしゃれな玄関手洗い
陶器製のボウルが印象的な玄関手洗い。洗面台を下駄箱よりも一段低くし、お子様でも使いやすい高さに調整しています。木タイルや室内窓との相乗効果で、おしゃれな玄関を演出。
施工事例4 木×アイアンの質感を活かした玄関土間の手洗い
広々とした土間の片隅に設けられた玄関手洗い。木の質感とアイアン・ボウルの黒がインダストリアルな空間を生んでいます。玄関土間には可動棚やコート掛けを設置しており、大きな鏡も取りつけました。ここで身支度を整えることができます。
施工事例5 モダンアンティークな濃紺タイル張りの玄関手洗い
玄関に隣接するウォークインシューズクローゼットに設けた手洗い。水撥ね防止のため、壁と化粧台に濃紺のタイルを貼りました。玄関の正面に配置されているので、来客時にはカーテンを閉められるようになっています。
施工事例6 下駄箱に組み込まれたコンパクトな玄関手洗い
手洗い器を組み込んだ造作の下駄箱。帰宅動線・トイレの配置を考慮し、ベストな位置に手洗い場を設けています。水撥ねに考慮し、玄関の壁は一部タイル張りを採用。後日、お施主様がお好きなタオルハンガーを設置できるよう、敢えて面材には何も取りつけない状態でのお引き渡しとなりました。
施工事例7 木とタイルでナチュラルテイストにまとめた玄関手洗い
シンプルに、スッキリまとまった上品なエントランスと玄関手洗いです。壁や天井を工夫し、手洗い場が突き出るのではなく、壁に埋め込まれているように演出。タオル掛けや鏡を設置できる空間が生まれ、帰宅動線もスムーズです。カラフルなモザイクタイルを採用し、程よいアクセントとしています。
まとめ◆ポスト・コロナ時代の間取り
日本は清潔な国だと言われますが、新型コロナ感染症の流行によって、更に清潔に対する意識が高まったように思います。ここ数年、玄関や玄関ホールに手洗い場を設ける事例が増えていることを考慮すると、今後は「玄関で手洗い」がスタンダードな間取りになる可能性も十分考えられます。
玄関手洗いは、スムーズにアクセスできる動線、人目に晒されることを想定したデザインが重要になります。動線は設計士とよく相談するとして、造作の洗面台のイメージは巷間に溢れていますので、日ごろから好きなものをスクラップしておきましょう。壁紙や床材で悩んだ時、化粧台のデザインを手掛かりに、玄関全体のデザインを決めていくこともできます。
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自社にて大工を育成している平成建設では、お客様のご希望に合わせたオリジナル家具を製作しています。特に洗面化粧台は、人気の高い家具のひとつ。お客様が選ばれたパーツを取り入れた家具製作に留まらず、洗面台を含めた空間のトータルコーディネートも行っています。
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