空間漆芸 / architect interview02

ARCHITECT INTERVIEW

02

COMMENT

設計士の視点で空間漆芸について伺いました

平成建設デザインアトリエ 和知祐樹

会員制ホテルのロビー壁面に施された漆のパネル 会員制ホテルのロビー壁面に施された漆のパネル

ここにしかないものをつくる。それが付加価値となる

漆という素材を用途に応じて使い分けてきた和知さんに、事例を通してその魅力をお聞きしました。

心を掴む効果的な素材だと感じた

漆を取り入れたきっかけは?

会員制ホテルの新たな顔となるような壁面提案。訪れる人々の心を掴むことができる最も効果的な素材は「漆」しかないと思いました。私自身この目で大きな面積の漆を見るまではその魅力を知りませんでした。うつわや箸といったものとは異なる魅力に、思わず見入ってしまいました。

外の景色を映し込む鏡面仕上げの漆パネル

オーナー様の反応はいかがでしたか?

日本の伝統技法である「漆」と「組子障子」の組み合わせにより、壁面が巨大アートに昇華しました。磨き上げた漆板が、まるで鏡のように元箱根の景色を映しています。宿泊や食事以外に、アートスポットとしてもお客様に立ち寄っていただける、そんな場所になりました。美術館でくつろぐような空間になったと喜びのお言葉を頂戴いたしました。

漆を施した床の間の床板

互いに引き立てあう

こちらの作品はどういったものですか?

高級な美術品などを展示することもある地板。美術品と喧嘩せず調和できる素材として「漆」が最も適していると思いました。美術品などが映えるためには、良い引立て役となる素材である必要があると思い提案しました。

フローリングに漆を施した住宅のリビング

「漆」は意匠面で優れていることはもちろん、機能面でも多くの利点があるため水廻りなどで提案しました。比較的安価に使用できる材料に「漆」を塗布することで、高級感のある新たな魅力を引きだせるのではと思いました。

和知祐樹

平成建設デザインアトリエ  和知祐樹 Wachi yuki

設計者としてはいくら試しても飽きることがない素材

「漆」と一言でいっても下地や仕上げ方法でその表情はどれも大きく異なり、設計者としてはいくら試してもあきることがない素材です。歴史ある素材であるにも関わらず、まだ多くの可能性を秘めており、空間に応じて様々な提案ができそうなので今後も積極的に設計段階で取り込んでいきたいと思います。
選択肢のなかに「漆」ができたことは今後大きな強みになると感じました。