空間漆芸 / architect interview01

ARCHITECT INTERVIEW

01

COMMENT

設計士の視点で空間漆芸について伺いました

平成建設デザインアトリエ 角谷良一

漆の引き戸やキッチンカウンターのあるリビング 漆の引き戸やキッチンカウンターのあるリビング

新しく且つ奥行きのある高級感を表現することが可能だと感じた。

これまで戸建て住宅とショールームの設計にて漆を取り入れてきた角谷さんにお話を伺いました。

見たことのないものに魅力を感じた

漆を取り入れたきっかけは?

色々な試みに対して漆職人から様々な提案があり、新しい表現で且つ奥行きがあり高級感のある表現が可能だと感じたこと。お施主様が沼津ショールームの「漆の間」をご覧になったとき、強い関心をお持ちになっていたことがきっかけです。手すりやリビングの建具、カウンターの天板や手洗いボウルなど、漆の特性を生かせる場所に適した技法で施してもらいました。

存在感のある漆の一本引き戸

お施主様の反応はいかがでしたか?

お施主様の関心の高さから、プランニング段階で漆を提案したところ、大変よろこんでいただきました。
具体的には、自分で描いたラフスケッチやイメージ画像、ショールームにある実物を見ながら進めていきました。内装にコストをかけられる方でしたので面白い試みができたと思います。

漆の床の間がアクセントになった和室

漆職人との協働で生まれたアート空間

こちらの作品はどういったものですか?

漆を使って新しい表現かつ奥行きと品があるもの作れないかと、漆職人と試行錯誤してたどり着いた表現です。岩のオブジェは、紙でできていて重厚感があるのにとても軽い。漆の放つ艶がまるで岩清水のように見え、インパクトを出しつつも風情を感じます。入口を開けるとすぐに見えるもので、パッと見て何でできているのか分からない。そこが面白いですね。

漆の艶が際立つ岩のオブジェ

こちらは自然をテーマにした和の空間です。自然のものを自然のままに造作材や仕上げ材として取り付け、なるべく仕上げない。ここの床板に、夕暮れ時の湖をイメージし漆で水を表現しました。よく見ると淵もランダムになっていて、溢れる・こぼれ落ちそうな水を表しています。

夕暮れの湖を漆で表現した床の間

ここは土をつかった壁で、土をえぐったようなイメージのニッチです。土の中にあるであろう地層・土の断面をイメージした漆芸を棚板部分に採用しました。素材を生かしたいので土が勝つように納めました。

土をえぐったようなイメージのニッチ
角谷良一

平成建設デザインアトリエ  角谷良一 Kadotani Ryoichi

空間漆芸を取り入れてみていかがでしたか?

経年変化が美しく、同じものが出来ないことは高級志向のお客をひきつけます。漆の持つ可能性と新しい使い方に柔軟に対応できる空間漆芸は建築空間をより豊かに奥行きのある物にできると感じました。また職人と一緒にものづくりをすることで、より高度なものを提案できることも実感しました。