MAGAZINE

平成らしさを読み取る

  1. HOME
  2. ブログ
  3. インタビュー
  4. 漆技術の新たな可能性と、大工の挑戦。

漆技術の新たな可能性と、
大工の挑戦。

大工だけで200人程が社員として在籍する平成建設。その魅力を一言で伝えるのは至難の業。それでも声を大にして伝えたいのが、平成建設大工がつくりだした独自の技術たち。その中の一つである「不燃材への漆塗布技術」は、漆職人であり、大工でもある有賀 建樹(あるが たつき)さんが約1年の歳月を費やして可能にした技術です。 開発の背景やきっかけ、漆技術のこれからについて、インタビュー形式でお伝えします。

木材に塗布するのが一般的な漆を、木材以外の素材へ漆が塗布できるようになったことで、活用の幅がさらに広がり、建材としての今後も楽しみに。

今回開発された「不燃材への漆塗布技術」のおかげで可能性がより広がったと思いますが、何がきっかけで開発がスタートしたのでしょうか。

有賀:同僚の一言ですね「コンクリートで家具つくれない?」と。本来漆は机など木部に塗るのが一般的で、コンクリートに塗るなんて正直考えたこともありませんでした。ためしに社内にあったコンクリートの廃材に漆を塗ってみると、とてもいい表情になったんですね。その日をきっかけに、技術の開発を進めていくことになりました。

平成建設にはコンクリートの職人がいるため、素地となるコンクリートのサンプルを作る際も助かったそう。写真は漆を塗る前のコンクリート打設の様子。

有賀:環境にも恵まれていましたね。一般的にサンプルづくりには手間もお金もかかり大変ですが、 社内には工務部というコンクリートのプロフェッショナル集団がいるので、「こんなものがほしいんだけど…」といえばすぐに用意してくれました。

有賀が開発した漆の技術は、2017年グッドデザイン賞を受賞。
写真はグッドデザイン賞授賞式にて。(写真中央:代表の秋元。右:有賀)

有賀:「ヒカリオリ」という漆を使った照明器具も設計士の一言から始まったものです。乾漆の技術を応用したものですが私が一人でつくったというより、職人がいて設計士がいて、デザイナーがいて…内製化をしている建設会社という環境だからできたことだと実感しています。

社内の設計士と開発を進めた「ヒカリオリ」は、乾漆の技術を応用している

社内にはさまざまなプロがいるので、ふと思いついたことが実現できてしまいますね。もちろん漆技術を持つ有賀さんがいてこそだと思いますが、有賀さんが漆職人になったのはいつ頃だったのでしょうか。

有賀:元々生まれ育った町には漆職人が多く、祖父が漆職人でもありました。ただ両親から漆業界は衰退していっていると聞いていたので、継ぐつもりはありませんでした。しかし、通っていた美術学校の学内コンペで漆の作品を出展したところかなり評価されまして。普段から厳しいコメントをされる先生も「なぜこの技術を生かさないのか」と。生まれた土地のおかげもありますが、漆は自分にとって身近なものだったので周りの反応の差に驚きました。 それをきっかけに、漆職人の道を歩み始めました。

世田谷ショールームの展示室の一角にある空間には、漆黒が美しい下駄箱がある。
これも有賀自ら漆を塗布した事例。素地づくりや、施工も大工である有賀自ら行う。

住宅の玄関ホールの正面壁に塗った事例。
アートを鑑賞するように漆壁を鑑賞でき、刻々と変化する漆の色も日々の楽しみに。

Q 社内で漆技術を確立させつつありますが、今後挑戦していきたいことなどはありますか?

有賀:そうですね、漆で海外にアプローチを掛けたいと思っています。
以前漆の壁を取り入れたお客様から「この世界観はない、絶対目立つし面白いから5年以内にミラノサローネに出展しよう」と言ってくださって、今はそのタイミングを狙っています。 この漆文化の良さに共感してくれる、すべての人に届くようこれからも頑張ります。

Q 最後に就活生へ、メッセージをお願いします。

平成建設には工務部以外にも頼りになる部署があり、フラットに話せる環境です。これまでの様々な挑戦も私だけではなく、職人や設計士・デザイナーの協力があったからできたこと。内製化をしている建設会社だからこそ、自分の裁量次第で色々チャレンジできる会社だと思います。

■ 有賀 建樹 / Tatsuki Aruga (2014年入社、大工工事部 漆大工)
大工として現場の管理や、工事を進める一方で、漆の技術開発に努める。現在では平成建設の様々な物件で漆を活用した壁や家具などを見ることができるようになった。これからの活躍が楽しみな職人の一人。

関連記事