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工務部が挑戦するコンクリート表現 デザインコンクリート

石を積み重ねた花壇のようですが、実はこの花壇、コンクリートでつくられています。この花壇をつくったのは、平成建設の工務部に所属する多能工、小林 浩司(こばやし こうじ)さんです。 賃貸マンションの躯体工事や住宅の基礎工事を専門とする工務部を率いる小林さんが、なぜこのような花壇をつくっているのか?「デザインコンクリート」という新たな価値創造へ挑戦する小林さんに、お話を聞きました。

Q なぜコンクリートに着目し、デザインをしようという挑戦がはじまったのですか?

小林:平成建設では、「多能工」と呼ばれる型枠・鉄筋・土木・外構・住宅基礎・足場の工事をすべてこなす能力を持つ職人を育成しています。そのなかでも、多能工は、マンションの躯体や住宅基礎などコンクリートを扱うことが多く、鏝を使った左官工事を日常的に行っています。そういったこれまで培った技術と現場での豊富な経験を活かして、何か新しい価値を生み出せないか ―。そう思案していた時、コンクリートによる新たな表現方法に出会いました。それが、コンクリートにデザイン表現をプラスした『デザインコンクリート』です。

Qデザインコンクリートについて教えてください

小林:デザインコンクリートはコンクリート特有の強度や耐久性を持ちながら、意匠性としての役割も担う素材、技術です。本場アメリカでは専門誌が出るほど文化として根付いていおり、日本でもテーマパークや商業施設以外にも新築住宅やリノベーションで見られるようになりました。具体的には、石や木、レンガなどの異素材を特殊なモルタルを使って再現できたり、壁や床に模様を描いたりすることができます。そこに共通しているのは、人の手仕事で表現していくということ。高度な技術とセンスが問われる、まさに職人の技が光る特殊施工技術だと思います。

小林:また、デザインコンクリートは全て手作業のため、全ての施工が唯一無二の一点ものになることが魅力的です。ですが、同時に職人の腕も非常に重要であり、自分のイメージを形にするためには、練習と研究が必要です。私は、デザインコンクリートの素材を販売する会社の講習会に参加したり、試しに工務部入り口の床を施工してみたりとより豊かな表現ができるよう日々研究を重ねています。実際に、お客様にもご提案しており、住宅のリノベーションや商業施設のエクステリアに採用していただきました。

Q一言にデザインコンクリートといっても様々な表現方法があるのですか?

小林:デザインコンクリートには石やレンガを表現するために特殊なモルタルで一から描写、造形していくデザコンウォール、専用のスタンプを押し模様をつけていくスタンプコンクリート。そして、MPCと呼ばれる今までのコンクリートの表現枠を取り払う画期的な技術もあります。また、塗るだけでおしゃれなモルタル調の壁が再現できるワンダーフィックスは、木の上からも塗れるため、新築住宅やリノベーションの内装材として非常に好評です。

住宅の玄関ポーチに施工されたスタンプコンクリート オーバーレイ(階段)と黄色ベースのMPC(ポスト付き飾壁)。どちらも既存のコンクリートの上から施工でき、リノベーションでも人気。
商業施設の駐車場に施工された石畳と板張りのスタンプコンクリート カラーハードナー。本物のような質感もさることながら、コンクリート特有の耐久性にも優れている点が魅力的だ。
壁に塗るだけでモルタル調のインダストリアルな空間に仕上がる、ワンダーフィックス。木の上に塗ることもできる。鏝の当て方や塗りの厚さなど、照明が当たることでより浮かび上がる。

Qこんなに表現の幅があるとは驚きです。この中でもよりチャレンジしていきたいと思うものはありますか?

小林:どのデザインコンクリートも魅力的なのですが、その中でも、「デザコンウォール」と「MPC」は非常に奥が深いです。デザコンウォールは何もない土台から、石積みやレンガなどの完成形をイメージし、モルタルを盛っていきます。平面ではなく立体的にデザインしていくため、かなりのセンスと技術が必要になる最も高度なデザインコンクリートです。そこからさらに何色も色を重ね、完成形に近づけていく工程は、さながら絵を描く、アート的な感覚に近いと思います。
私は、やり始めるとこだわりすぎてしまい、ついつい何時間もかけてしまいます。そんな芸術的な基礎能力を必要とするデザコンウォールですが、平成建設の多能工ならできるのではないかと自信を持っています。日頃から高品質なコンクリート造りを行い、様々な技術を習得している彼らには、ここでも発揮できる能力があると感じています。

花壇の石積みと木の水栓柱をデザインコンクリート デザコンウォールで施工。凹凸や色など細部までこだわり、まるで本物のような質感とヴィンテージ感のある風合いが生まれている。

そして、MPCはわずか1mm程度という厚さでコンクリートを保護しながら様々な表現を可能とする仕上げ材です。左官仕上げなので、鏝の当て方や塗り方次第で絶妙な色ムラや凹凸を表現できます。また、彩り豊かな模様を描いたり、ステンシルシールを使ってロゴを描いたりすることもできるので、デザインの幅は無限大です。耐久性も非常に高く、一度に広い範囲を施工できるため、人々が行き交うショッピングモールやテーマパーク、住宅ではガレージ床などに多く使われています。ちなみにですが、本社新社屋の1階男子トイレの床に施工しています。印象的なテクスチャ―に仕上がるよう、わざと色ムラや塗り跡を多めに残しているのがポイントです。男子トイレですが、お越しの際は是非ご覧ください。

MPCは薄塗りながらも、カラフルな模様やロゴを入れることができるため、非常に自由度が高い。
MPCにステンシルシールで平成建設のロゴを入れた、工務部事務所入り口の床。

Qデザインコンクリ―ト以外でも、身近な“ある素材”を使ってユニークな壁を作られたと聞きました

小林:とある建設現場で施工した、「デニム生地」を使った打放しコンクリートですね。建設業界において、杉板やゴム板を使って打放しコンクリートの表面をあらわす意匠は、多々見られ、もちろん私たちも施工してきました。ですが、デニム生地を使い布目やシワを表現することはおそらく初めてではないでしょうか。このような試みに挑めるのも、コンクリートの型枠を作る型枠大工が部署に存在し、意見を交わしつつ協力し合えたからです。職種にとらわれず対応できる多能工がいるからこそ挑戦できた取り組みであり、組織としての成長と仲間としての誇らしさを感じています。

デニム生地を使ったコンクリートの仕上げの試行の様子。青い布がデニム生地であり、完成をイメージして布のしわまで計算している

Qお話を伺うと、職人同士のチームワークが工務部の強みの一つだと感じます。その工務部を率いる小林さん、これからの目標はいかがですか?

小林:デザインコンクリートの取り組みは、店舗利用はもちろんのこと、マンションのエントランス壁や住宅の内装、外周飾り壁などに、同じ模様はふたつとないアートのような存在として取り入れていけるよう、試行錯誤を続けていきます。そして、デザインが一律となる壁紙やタイル床とは一線を画した、職人のなせる技を提供していきたいです。
そして、私ども工務部は、建設業界では異例である「職人の多能工化」に挑み、少しずつ仲間を増やしてきました。これからも失敗を恐れず、挑戦を続け、職人ならではの「ものづくりの楽しさ」を後輩たちにも繋いでいきたい、そう考えています。

■ 小林 浩司 / Koji Kobayashi (1995年入社、本社工務部)
首都圏勤務を経たのち、現在は本社多能工集団を率い積極的に新たな分野へと挑戦を続けている。

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