Salone del Mobile.Milano 2016 / Cassina × Patricia Urquiola | 平成建設オフィスブログ
インテリアコラム

Salone del Mobile.Milano 2016 / Cassina × Patricia Urquiola

6月に入り、梅雨の季節がやって来ましたね。
個人的に雨はあまり好きではありませんが、暑いが何より苦手な私に今年は例年よりも気温が上がるという容赦のない予報が。
…雨のお陰で気温の急激な上昇も抑えられる…そう思えばありがたく感じられるもの。夏直前、つかの間の穏やか?な時期を愉しみたいと思います。

先月から各インテリアブランドやショップから、4月に行われた『Salone del Mobile.Milano』通称ミラノサローネ国際家具見本市の報告会や新作発表のお知らせが届いています。その中から気になった展示と、業界で大きなニュースとなった、イタリアインテリア界きってのリーディングブランドと話題のデザイナーとの協業についてお届けします。

◇What is 『Salone del Mobile.Milano』?◇

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毎年4月にイタリアのミラノで開催される世界最大規模の国際家具見本市で、1961年にイタリア家具やインテリア小物の輸出を促進するために誕生。現在ではミラノ市郊外のメイン会場、「ロー・フィエラミラノ」で2300社を超える展示の他、自主的な展示 Fuori Salone(フォーリサローネ、サローネの外の意)が市内の至る所で行われ、このデザインウィーク期間中はさながら街全体が会場の様な盛り上がりを見せるのです。

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国際的なインテリア見本市は幾つかありますが、ミラノサローネは家具・小物・照明・キッチン・バス・トイレタリーなどインテリアの総合的な見本市という位置付けとなっています。

今年2016年は4月12(火)~17日(日) に開催。「ユーロルーチェ」(照明)と「ユーロクチーナ」(キッチン)が隔年で開催されるのですが、今年はキッチン・バスの EuroCucina の年。キッチン各社、設備機器取り扱い会社が一斉にミラノに集結。
今年は昨年を超えて過去最大の来場者数を数えたと伝えられています。関係者やインフルエンサーの SNS でも、速報写真やパーティの様子など華やかな話題が数多く飛び交っていました。

◇This year’s features!◇

今年は家具の展示構成が「Classic」と「Design」に分けられ更に「xLux」(エクストラ・ラグジュアリー)を新設。
ファッションや車を扱う高級ブランドからのインテリア参入が多く見られました。各ブランドアイコンを彷彿とさせるインテリアが効果的にデザインされていて、元々の顧客やブランドファンに向け、トータルなライフスタイル提案を行っているのが印象的です。
インテリア業界でもホームアクセサリーや小物の展開、有名ブランドやデザイナーとの協業で新たな付加価値を持たせるよう展開するブランドが増える傾向にあります。

ブガッティ

Photo by Héctor A. Tablero (2011)/ Adapted.

■bugatti-veyron(ブガッティ・ヴェイロン)■
「xLux」ブースでは、世界最速にして最も手に入れにくいスーパーカーとしても名高い bugatti がホームコレクションを発表!
ブースはブランドのキーカラーであるブルーをメインに、カーボンファイバーを使用したミニマムなデザインの家具でブガッティの世界観を表していたそう。ブガッティ・ヴェイロンの内装材は各オーナーの好みに合わせて全てオーダーメイドで作り上げていくので、ホームコレクションも自由度の高いカスタムが可能なのか?が個人的に気になります。ブースには新型のシロン(限定500台販売、価格は¥300,000,000~)も合わせて展示され、その豪華過ぎる展示は大きな話題となりました。

高級車では他に lamborghini もブースを展開。宝飾品では SWAROVSKI もホームコレクションを発表し、故ザハ・ハディド氏を含む9名のデザイナーとの作品を披露しています。ファッションブランドからは Bottega Veneta や HERMES、MISSONI に前回のイベントレポートでもご紹介した ARMANI CASA …と錚々たるブランドがラグジュアリーの極みとも言える展示を行い、多くの来場者で盛り上がりを見せていたようです。

◇side story  CITIZEN ~time is TIME~◇

インテリアではないのですが、美し過ぎるインスタレーションを展開し話題を呼んでいたのが CITIZEN のブース。時計部品の基盤である地板を用いたこのインスタレーションは、二年前のミラノサローネ2014でも発表され「ベストエンターテイニング賞」と「ベストサウンド賞」の2部門を受賞。同年11月にスパイラルで開催した「CITIZEN ”LIGHT is TIME” ミラノサローネ 2014 凱旋展」も 2015年度グッドデザイン賞を受賞しました。

今年も時計という小宇宙で“美”を追求してきた同社の理念を伝えるべく、DGT Architects の田根剛氏、LUFTZUG の遠藤豊氏と共に「time is TIME」展を展開。シチズンのプロダクトポリシーである「技術と美の融合」を表し「いま」と「未来」二つの時間を体感できるインスタレーションは、2つのブースに地板を約12万個使用した幻想的な空間。ご興味のある方は 公式HP で是非ご確認下さい。

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この画像は2014年に青山のスパイラルホールで行われた「LIGHT is TIME」凱旋展を撮影した物です。

この時の展示ではスパイラルホールの螺旋の空間に65,000個超の基盤が吊るされ、煌めく様は圧巻の一言でした。中を自由に歩いて展示が見ることができ、まるで宇宙空間を漂っているかのような感覚が忘れられません。丁度立ち寄った時には中央の特設ステージでタップダンスが披露され、基盤の放つ輝きの中響くタップ音とダンスの幻想的なショーに時を忘れて見入ってしまいました。「time is TIME」展も凱旋展を行ってくれると嬉しいな、と密かに期待しています。

◇Cassina × Patricia Urquiola◇

今回のミラノサローネにて、多くのインテリア関係者から熱い視線を注がれていたのがCassina。

同社は来年90周年を迎えるにあたり ”Origins of the Future(未来の起源)” というコンセプトのもと、アート・ディレクターに今最も旬なデザイナーのひとりであるパトリシア・ウルキオラ氏を迎えました。長い歴史を持つ Cassinaでも、全てを統括するアート・ディレクターというポジションを設けることは初めての試みなのだそう。

CASSINA_Patricia Urquiola A■パトリシア・ウルキオラ氏■

ウルキオラ氏は昨年9月に就任後、N.Yのショールームリニューアルを皮切りにケルン国際見本市の会場デザイン、ミラノサローネではロー・フィエラ内のスタンドデザインと、市内ショールームのディレクション、新作家具2点を発表…と精力的な活動を行っています。

フィエラブースA■ロー・フィエラ内Cassinaブース■

ブロックの壁面からインダストリアルな印象を受けるこのブースは、クレラー・ミュラー美術館内のリートフェルト・パビリオンがイメージソース。

ユトレヒトA■ユトレヒト■

2017年に迎える90周年の anniversary に向けたプロジェクト「C90」にて、Cassina の歴史の中で重要な役割を果たしたアイコニックな作品に、現代的解釈を加えて刷新するという試みを行っています。画像は1935年にオランダの老舗デパート「メッツ」の依頼で生まれた、Cassina を象徴する作品のひとつであるリートフェルトの”ユトレヒト”のリミテッド・エディション。
オランダの若手デザイナー、ベルトイアン・ポットがこのソファのためだけに特殊なジャカード織のテキスタイルを3種類デザイン。限定各90台が販売されます。


ジェンダーA■ジェンダー■

今回のサローネにて発表された、Cassina ×ウルキオラ氏の初の家具デザイン協業2作品のひとつ「ジェンダー」。テクスチャーと色のレイヤーが特徴的なデザインで、優美でありながら力強くもあり、コントラストの効いた5パターンの色の組み合わせとともに、ジェンダーレスを表現しています。


ビームA■ビーム■

こちらも Cassina ×ウルキオラ氏の協業作品。
Cassina のアイコンのひとつでもあり、世界の名作ソファ、MoMAの永久コレクションにも選ばれたヴィコ・マジストレッティの「マラルンガ」。
そのオマージュがこのビーム。名前は脚の形が由来なのだそうです。デ・パドヴァでマジストレッティに師事した事もある彼女には、きっと特別な思いがあったのではないでしょうか。師匠への敬意を払い、その上で彼女らしいアプローチで新たな解釈を表現しています。


業界を賑わせた、老舗インテリアブランド×敏腕デザイナーとの協業。
今後も様々なデザイナーとのコラボレーションを継続し、デザインだけではなくブランディングに関しても Cassina のブランドディレクターとウルキオラ氏で指揮を執っていくそうです。同社の歴史を一つ一つ丁寧に振り返った上で、ウルキオラ氏が考える新しい Cassina に今後も注目していきたいと思います。


例年にも増した盛り上がりを見せて、大盛況の内に幕を閉じたSalone del Mobile.Milano 2016。世界のインテリアを一気に見られる最大の機会とあって、毎年この時期には業界関係者以外にも世界中から多くのインテリアファンが訪れます。残念ながら今年も見送ってしまいましたが、来年には是非実際に訪れたいものです。
このイベントに合わせて新商品を発表されるブランドも多いので、「今」を感じられるインテリアに触れる良い時期とも言えますね。夏目前、インテリアの衣替えの検討も兼ねてショールームを巡ってみるのは如何でしょうか。