前回の記事に続き、鎌倉で建築中の「設計士の自邸」についてご紹介。この家づくりのオーナーは平成建設の設計士Kです。
運命の出会い
「インターネットで偶然発見した」という、鎌倉市小町の土地。公開されて3日目の物件だったようで、発見当時、土地には築50年の平屋(2LDK+和室)が建っていました。すぐに現地に行き、土地を見た設計士Kは、「こんな土地にはそうそう出会えない!」と感じ、購入を即決。
既存住宅をリノベーションするか建て替えるか悩んだ設計士Kは、既存の古家を取り壊さずに、1年間住んでみることにしました。日当たりや近所づきあいなどを住みながら確認し、どちらが良いか考えることにしたのです。
<設計士Kに質問>
Q.既存の古家に住んでみてどうでしたか?
住んでみてわかったことは、過酷な温熱環境です。築50年で、どうやら前々回の東京オリンピックの年に建てられたそうですが、断熱材がないため、エアコンをつけても夏はとても暑く、冬は寒すぎました。
リノベーションをした場合、すべての部屋で15℃を下回らない環境を作るには、柱・梁といったフレーム構造以外はほぼすべてを解体し、つくりかえる必要があり、結局は新築と同等かそれ以上の費用が掛かってしまいます。費用を抑えてリノベーションをしても、かなり我慢をしながら生活しなければならないということがわかりました。
また、統計的に寒暖差の激しい家とそうでない家とで健康への影響を調べた資料があり、個人差はあるとは思いますが、影響があること自体は明らかでした。温熱環境のまずさが、建て替えを選択する大きな要因になりました。
<設計士Kに質問>
Q.なぜ鎌倉に?
鎌倉に両親の実家があったり、私も娘が幼いころ住んでいたり、縁がありました。
数年かけていくつか土地を見て回りましたが、鎌倉は山に囲まれた地形で、条件の厳しい土地(日当たりに難があったり、崖下だったり)なら手が届くけど、「ハードルが高いな」という感じでしたね。
今回見つかった土地は、前面道路の幅員が非常に狭く軽自動車も通れないといった制約はありましたが、周辺環境が気に入りました。
Q.鎌倉の魅力は?
小さな個性的なお店がポツポツと分散して建っていて、散歩していて発見があります。日用品を買いに行く大きなお店は少ないですが、出かけると大体知り合いに会うところもいいですね。観光地でもあるので、適度に活気があり、治安もよいところでしょうか。年末年始はお寺の鐘も聞こえ、全体的に季節感がはっきりしています。
ー
家づくりの現場は、鎌倉の観光地から少し脇に入った閑静な住宅街。鎌倉のいいところをたっぷりと味わえる土地との出会い。1年間の古家暮らし。そんな環境や体験を活かして、設計士Kはいったいどんな家を建てることにしたのでしょうか…?
次回、お楽しみに。
ー
01.鎌倉で家づくり|連載スタート
02.鎌倉で家づくり|古家に1年間住んでみた
03.鎌倉で家づくり | パッシブデザインについて考えてみた