北鎌倉駅から、山に向かった先に、ひっそりと佇む住まい。竣工しました。
星野リゾートのサイトにはこんなコンセプトが描かれています。「日常から離れて過ごす時間を満たす、最も上質な滞在空間」。目指すは「星のや北鎌倉」、ということで建築が進められたこちらの北鎌倉のお住まい。日常から離れずとも、日々の暮らしを満たす上質な空間に仕上がったのではないでしょうか。写真は2階LDK。
窓の先には、北鎌倉の山々の緑。落ち着いた室内からの、借景がとてもよく映えます。設計士は、この立地を活かし、窓の設計に力を入れました。環境・景色に合わせて窓を配置。結果、少々気になる景観はひっそりと隠され、心地よい景色は住まいに上手に取り込まれいます。
バルコニー脇にはキッチン。「部屋」としての独立感を味わうために、キッチンは、リビングと分離。おもてなしの際に、散らかったキッチンを隠すこともできます。
こちらの窓からも景色が目に飛び込んできます。ほっと一息コーヒーを淹れてぼーっとしたいなと思いました。ここでおいしい料理をつくりながら、一杯。うん、美味しい、幸せ。すべて想像ですが、そんな素敵な想像が膨らむ「星のや北鎌倉」、贅沢な空間です。
こちらは玄関。建物の顔となるコーナーに、花台・板張りの庇を設け印象的な外観をつくっています。格子戸・三和土(たたき)・化粧柱と合わせてしっとりとしたそれでいてモダンな和の佇まい。花台は、設計士が設計し、それを大工が、製作しています。こんなものもつくれてしまうのかと驚きです。
広い土間のある玄関。趣ある低いステップ(式台)。しっとりとした雰囲気の中に、古建具が映えます。 ドアは「シナ」、式台は「ケヤキ」、上がり框(がまち)は「ヒノキ」と、ところどころ異なる樹種を使用しています。数種類の樹種を使用することで、一見、ちぐはぐになってしまいそうですが、それらの素材を吟味し、抑えた色味でコーディネートすることで、統一感のある空間に仕上がっています。
天井高は一般的な高さですが、建具が180cmと少し低くなっているせいか、なんとなく天井が低く感じました。それにより自然と重心が低くなり、床に座ってくつろぎたくなります。こういった視覚効果の中で、「和」の持つ独特の「寛ぎ」が演出されているように思いました。窓の高さも低く設定することで、よりくつろぎのある空間に。
塗壁、薩摩葦の天井も含めて様々な素材を使用した、数寄屋づくりの和室です。こちらも玄関同様、素材はいろいろ使っていても、統一感があって、きれい。欄間付障子は、古建具に合うようにお施主様と一緒に設計したそうで、その向こうには桜の木を植樹。春にはお茶をたてながら桜を見るのもよさそうです。
和風の住まいでよく感じるのは、「なつかしさ」。今回のお住まいも全体的に和風の雰囲気。しかし決してなつかしさを感じる空間ではなく、むしろ新しい、今っぽい和風、そんな感覚を持ちました。純和風とは違った、なつかしさとも違った、「こんな和風もいいね」と好感が持てる和風の住まい。それがコンセプトの「『星のや』のような」を体現出来ているところかもしれません。お施主様のセンス、設計士による素材や色使い、細部にわたるデザインや気遣い、職人たちの施工精度、そういったものがこの空間を生み出しているのだと思います。
「星のや北鎌倉」は住むごとに味わいが増しそうです。竣工おめでとうございます。