湘南情報

葉山「山口蓬春記念館」

曖昧な天気の中訪れたのは、葉山にある「山口蓬春(ほうしゅん)記念館」です。画家山口蓬春の邸宅を記念館として公開しています。蓬春はこの住まいを、当時愛用していたドイツ製カメラ「ライカ」一式を売却することで手に入れ、増築や改築を行いました。カメラの価格と、住まいの価格が当時は同じだったのでしょうか。

展示室の先にある「画室」へ。蓬春のアトリエですね。入った瞬間に目に飛び込んでくる庭の緑のなんと美しいこと。窓いっぱいの緑です。いい絵が描けるに違いない!!晩年蓬春は、この庭に咲く様々な花を描いています。窓は全開口ですべて格納できます。

反対側からのアングル。左の白い壁は、実は収納です。収納するもののサイズを測って棚の寸法を決めたそうで、「モンドリアン張り」にアレンジされているとか。(モンドリアン張り?ムム。モンドリアンとはあの画家のモンドリアンか。いろんなものから発想を得ているのだなあ。感心。)そして取っ手の無いデザインです。目地は濃朱の漆塗り仕上げと、(ほほう、漆をそういう風に使うのか。感心。)こだわりを感じます。

 

後ろの窓からも緑。この建具、枠の細さのきれいなこと。

 

気になったのは、この画室に備え付けられた家具たち。特に、この空間にとてもマッチしているように感じたこのテーブルセットは、この蓬春邸の増改築と画室の設計をした「吉田五十八(いそや)」によるデザインです。このテーブルセット欲しいなと思いますが、きっとこの空間にあってこその家具なのでしょう。「吉田五十八」も日本の有名な建築家らしいのですが、蓬春とは、東京美術学校で知り合った友人だそうです。

 

 

木のリズムがなんだかかわいらしい。

 

蓬春夫婦が過ごした茶の間。こちらも庭と葉山の海が見えます。縁側と、畳に段差があり、それぞれに座った人の目線が合うようになっているとか。天井がつながる感じがきれいでした。

二階からも海が良く渡せるそうなのですが、只今調整中ということで、見られず。

 

残念ですが、なんと100円と良心的なパンフレットにある写真からとても気になった家具が、この三角の机。こちらも漆で塗られているのですが、これ全部で15セットあるらしいです。この三角を組み合わせることで、多様な形の机をつくれるんですって。三角の可能性を感じました。「岡村多聞堂※」によって納められたとか。

※「岡村多聞堂」は、蓬春が、額装を任せた額装店。掛け軸にかけられていた絵画や書を、床の間の無い現代建築の中にいかにして飾るかを試みた日本で最初の額装店らしいです。

 

後庭です。基礎の部分に石がきれいに貼ってあります。

 

雨ですら味方につけてしまう美しい庭。

このチェーンは雨どいです。たまにこのチェーンのようなものがぶら下がっている住まいを見ることがありますが、雨が滴れて初めて気づく、雨宿り中の発見。「鎖樋(くさりどい)」と言います。

 

「山口蓬春(ほうしゅん)記念館」は、神奈川県立近代美術館 葉山館の前、この看板が目印です。皆様の家づくりの参考になりますように。