雑記

あの建物は今。

道を歩けば、そこら中に建物があります。その一つ一つに、誰かの生活や建てた人の努力が詰まっているのですが、それを意識することはほとんど無いでしょう。私たちは建築に日頃から携わっているため、何気ない建物の風景にもその背景を模索したり、良い点・悪い点、参考になるところを探してしまいます。建物は使われて初めて、建物として機能します。新築時に有名だった革新的な建物も、使い方が伴わず、数年後には見るも無残な状況になっていることもあります。逆に、生活感が出ることですこし物足りなさのあった空間に華が咲くこともあります。自分が携わった建物が、その後どうなっていくのか。これは常に気にし続けたいなと思っています。

 

img_8539_r

以前、現場密着ブログを書かせていただいていた物件の1年点検に同行して参りました。人間同様に長寿命化が進み、しっかりとメンテナンスをしていけば200年くらい建物がもつと言われる時代。1年というのは非常に短い期間ではありますが、わずかながら変化を感じることができました。もっとも特筆すべきはこちらのエントランスの天井面に用いた天然木の板張りの素材。新築時は一番上の写真から分かるように赤味のあるしっかりとした色に塗装をかけていましたが、現在では少し色が抜け、より天然素材らしい風合いに変化していました。

img_5430_r

 

img_5427_rテナント部分には店舗が入り、がらんどうの空間に機能が付与されています。

 

一見すると、不良品や施工不良なのでは?と思ってしまいますが、時間がもたらす変化(経年変化)です。最終的にはより色が抜け、灰色に近い色味になっていきます。そしていつか、塗り直しのメンテナンスを入れることで素材が長持ちします。

時の流れとともに建物は姿・形を変えることがあります。特に住宅には家族構成の変化が必ず付きまといます。10年経って、ようやく完成し。30年経っても困らない。(しっかりとメンテナンスができる。)そういう建物を作りたいと思う今日この頃です。