鎌倉で非常に高名な鶴岡八幡宮。その敷地の一角に佇む、モダニズム建築の傑作と言われる美術館です。建築業界では少し前からニュースになっていたのですが、今週末をもって閉館となってしまうため見納めて参りました。設計の四宮です。
この建物は1951年に開館。設計は、世界近代建築の三大巨匠として名高いル・コルビュジェの元で建築を学んだ坂倉準三です。戦後まだ間もない時期の建物ですが幾度かの改修を経て、現在に至ります。
神奈川県と鶴岡八幡宮の借地契約が今年の3月に切れてしまうことより、閉館後は解体されてしまう予定でしたが、建築業界をはじめ、各方面からの保存を求める声により建物の保存が決定しています。今後、耐震改修を行なうとのことですが、先行き不透明な点が多いようです。
1階の外壁は火に強く、柔らかくて加工性の良い大谷石が使われています。住宅の塀などにもよく使われる材料ですが、あまり雨水に強くないため外壁には適さないとされている素材です。ここでは、2階部分が持ち出して庇のような形状になっており、直接雨がかかりにくいように配慮されています。
私と同じようにこの名建築を見納めようと非常にたくさんの人が来場していました。鶴岡八幡宮の参道から脇道に入って、チケット購入の列に並ぶこと15分。正面の大階段を上って2階の展示室へ。下の写真1枚の中に建物の撮影をする人が4~5人写っています(笑)
展示室を抜けると中庭を望めるテラスに出ます。床に白い足跡がありますが、設計者の坂倉準三が師匠であるル・コルビュジェを案内した際に二人が立っていた場所だそうです。以前は中庭の壁面にスクリーンがついており、壁面を利用した上映も行えたとのこと。最近では住宅の吹抜けを利用してプロジェクターを設置するなんてこともありますが、その先駆けですね。
階段を下ると眼前に広がる八幡宮の池ロケーション。鉄骨の列柱が建物を支えるピロティも見どころの一つです。しかし、我々建物見たさにやってきた人間はそれより前にこちらに目がいきます。
階段の手摺です(笑)
片側は、鉄骨の柱から生えて中空を弧を描くようにデザインされた真鍮の手摺。坂倉準三が非常にこだわったポイントの一つとされています。…握りやすい。
もう片側は研ぎ出した黒色の石材が非常になめらかな曲線を描いています。この手摺を多数の人が絶えず観察していて、写真撮影が非常に大変でしたw
鎌倉館の隣に建つ新館。耐震強度が問題となり、2007年より非公開となっています。こちらは今のところ取り壊されてしまう予定となっています。
中庭の壁面の開口にはめ込まれたガラスブロック。竣工当初は入っていなかったそうなのですが、内側からみると中庭のアクティビティが魚眼レンズのように観察できて面白いです。
見学後は近くのカフェで休憩。クリームブリュレのフレンチトーストで糖分補充♪(笑)鎌倉は裏道を歩けば良い建物・美味しい食べ物が多数あって、文字通りぶらぶらするのがおすすめです。
この週末は近代美術館を見納めつつ、鎌倉散策などいかがでしょうか?